なやみごと
最近、恋人である夕くんの様子がおかしい。
なんとなく元気がないし、月島くんにやたらつっかかるし、一番気になるのは、私の顔を見て切なそうに目を細めること。
「みょうじさぁん、最近西谷さんがやたらうるさいんですけど、なんかあったんですかぁ?」
やっぱり私の勘違いではないらしく、月島くんが不機嫌そうな顔で尋ねてくる。
「そうだよね…私もなんか変だなと思ってた」 「痴話喧嘩に巻き込まれるのはごめんですよ。早くなんとかしてくださいね」
そう言って月島くんはさっさと歩いていく。別に喧嘩してるわけでもないし、夕くんはいつも優しい。この間だって私の友達に夕くんを紹介したり、順調なお付き合いだと思ってたんだけど…
放課後、誰もいなくなった体育館で、夕くんがのそのそジャージを着ている。
(あ、またため息)
何か気に触ることをしてしまったんだろうか、私のせいで夕くんが落ち込んでるんだろうか。そんなことを考えつつ、考えてたって仕方ないかと結論づける
「ね、夕くん」 「あぁ、どうした?ごめんな、早く着替えるから」
こんなに優しい声で言ってくれるのに、なんでそんな辛そうに笑うの?
「夕くん。私、なんかした?やなことしちゃったなら謝るから…なにかあるなら話してほしい」 「えっなんでだ?!」 「だって最近夕くん様子がおかしいから。私のこと嫌になったのかなって…」
最悪の結末まで想像してしまい、思わず潤む目を止められないまま、気まずい空気が一瞬二人を包む。けどすぐに夕くんは突然頭をガシガシとかいて、大声で叫びはじめた。
「ごめん、なまえ!お前のこと好きだから俺が勝手に悩んで、それでなまえを不安にさせるなんて彼氏失格だ!」 「え…どういうこと?」
好き、という言葉に安堵しつつも、やっぱり私のことで悩んでたんだ、とも思う。けど、夕くんの言葉を待とう。
「…こないだなまえの友達に会ったときに聞いたんだ。なまえが昔好きだった男が190センチくらいのやつだったって。俺、今まで普段もバレーも自分の身長気にしたことないけど、なまえは背が高いやつのが好きなんじゃ、とか考えたら焦っちまって…ほんと情けねえ!ごめん!」
「じゃあ、やたらと月島くんにつっかかったりしてたのも…」 「なまえが好きだったやつってこんな感じなのかって思ったら余計に焦っちまって。ほんと最低だな」
そう言って首を折る夕くんを見たら、涙も引っ込んでなんだか笑えてきた
「…あはは!もう夕くんかわいすぎ!大好き!」
思わずぎゅーっと抱き着く。
「うわ!かわいいってなんだお前!俺は真剣に悩んで…!」
口では怒りながらも、ぎゅっと抱きしめ返してくれる。その力強さと繋がる体温が愛しくて。
「あのね、私は夕くんが夕くんだから好きなんだよ。背なんか関係ないよ。それにね…」
耳元でそっと囁くと、夕くんはいつもの優しい笑顔で、とびきり優しいキスをくれた。
あなたの大きなアドバンテージ
(夕くんの顔が近くにある方が、しあわせだもん)
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