ありきたりな恋の始まり
今日は本当にツイてない。朝の運勢占いを信じておけばよかったと言うくらいに。
まず、寝坊して遅刻。例外なく先生に怒られる。購買のパンは売り切れ。掃除時間に水を被る。昼休みには階段でつまずいてころげ落ちる。なんてベタな。
ただよかったのは、たまたま下に居た菅原くんがキャッチしてくれたから、無事だったんだけど。
これを機に恋が始まったりして。 …なんて、ベタすぎ?
そして放課後、委員会を終えて昇降口まで行くと、傘を持っていないのにまさかの雨。今日は本当にダメだ。早く帰って寝よう。
(そういえば占いのラッキーアイテム、傘だったな)
そんなに強くない雨の中、急ぎ足で帰路についていると
「みょうじさん?何やってんの?」
命の恩人、菅原くん登場。歩幅が違うからだろうか。追いつかれていたようだ。
「あ、菅原くん!今日はどうもありがとう」 「それより、傘ないの?」 「うん。今日は本当に運悪くて。寝坊して慌ててたから忘れちゃった」 「とりあえず入って」
と、菅原くんは私に一歩近寄って、傘を傾けてくれる。
「え!いいよ、悪いし!」 「いーから、ね。家、あっち?」
そう言って私を促し、歩き出す彼にとりあえず着いていく。「それと、これ。今日使わなかったやつだから」と、鞄から取り出したタオルを渡してくれた。
「あ、ありがとう」 「ん。」
ふわりと笑う彼。やっぱり優しい人だなあ、菅原くんて。
「今日は2回も助けられちゃった。菅原くんってすごい優しいんだね、モテるでしょ?」 「いや、モテないよ。誰にでもここまではしないし」 「へえ」
「……すごくサラッと流されたけど、みょうじさんは特別だよって言ってるんだけどな」 「…え?特別…ってどういう…」 「好きってこと、だよ」
一旦立ち止まって、こっちをじっと見てくる菅原くん。
「返事は今じゃなくていいよ。そんなに喋ったことなかったし、まだ振られる覚悟できてないからさ」 「う、うん…わかった」
なんだか気まずくなって無言で歩き始めたけれど、隣の彼を見ると、告白した側にしては落ち着いていて、私ばかりドキドキしているのが悔しい。
「…菅原くんに告白されるなんていうラッキーが待ってるなら、今日ツイてなくてよかったかも。」 「そう?」
と、またふわりと笑う菅原くん。
「ラッキーだよ。一生に一度ぐらいの」 「じゃあ俺も今日みょうじさんを二回も助けられて、一生に一度?二度のラッキーかな」
彼の台詞に妙に照れ臭くなって、小雨降る町を歩いた。
家まではあと少し。 言わなくちゃ。
菅原くんは返事は今じゃなくていいって言ったけど、予感がする。私、きっと菅原くんのこと好きになるって。
今、言わなくちゃ。
「菅原くん。あのね、」
今日、私のベタな恋はスタートした。
きっと君に恋をする
(…あー、めっちゃ嬉しい。) (ちなみに今日、1位は双子座だったよ) (当たってんじゃん)
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