かすがが上杉先生の手伝いに行ったため、私はお弁当を抱えて一人で屋上に来ていた。普段なら教室で食べるのに、何故だか今日に限ってかすがが屋上で待っていろと言ったのだ。珍しい。


「イイ天気!」


屋上に繋がる扉を開ければ、青空が広がっていた。最近は梅雨が近いためか中々お目にかかることのできなかった太陽が眩しくて、私は一度伸びをしてからベンチに座った。
お弁当を横に置いて、少しの合間ぼうっとしているとガチャリと扉が開いた。
かすがかしらとそちらを向けば、意外に徳川くんがいた。


「徳川くん」
「ん、名前か。なんだ一人で昼飯か?」
「友達を待ってるんだよ」


ナチュラルに失礼なことを言った徳川くんに笑顔で返せば、そうか!と徳川くんが太陽スマイルで返してくれた。


「その友達が来るまで一緒して良いか」
「どうぞー」


少しつめれば、徳川くんが隣に座った。


「やっぱり晴れが良いなあ。」
「最近雨ばかりだったものね。あっ、ねえ、徳川くん」
「うん?」
「徳川くんこそ一人でお昼ご飯なの?」


さっきのお返しに尋ねれば、にっこりと徳川くんは笑いながら答えてくれた。


「まさか!三成と食べようと思ったら追い回されてな、逃げてきた」
「はっ」


何それ、思わず言いそうになった言葉を呑み込んだ。


「た、大変だねえ…。石田くんも何で一緒にご飯食べないんだろうね」
「うーん。昔色々あったからなあ。三成とワシは」


喧嘩でもしたんだろうか。へえーっと頷いた。


「仲良くなれたらいいね」


足をバタバタとさせながら呟けば、徳川くんが何故だか一度首を傾げてからああと頷いた。


「仲良くなれたらな。…ところで名前」
「うん?」
「名前は三成が嫌いなのか」
「嫌いじゃないよ」
「好き?」
「苦手」


へえーと今度は徳川くんが言った。


「三成が苦手かあ。」
「だって目がキツいよ、彼」
「そうだな。でもモテるだろうに」
「石田くんが?」
「三成は見た目がいい」
「えー。私、石田くんより徳川くんの方が好みだよ」


えっ、と徳川くんが目を開いた。数秒経ってから私の顔が赤くなっていく。


「ち、違うの!あっ、いや違わない!その、ほら、性格とか」
「分かってる、分かってる。というか、そんなに弁解されると切なくなる」
「ごめん」


パタパタと両手で顔を扇ぐ。顔だけがぼっと熱い。


「でも嬉しいな」
「へ、」
「ワシはな、名前が」


何を言われるのかと目をじっと見詰めれば、徳川くんが顔を少し赤らめてはにかんだ。


「いや、何でもない。ああ、そうだ」


今度は何だろうか、首を傾げれば徳川くんがまた爽やかに笑って言った。


「これからはワシのことを家康と呼んでくれ、な?」



 

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