猫は待てが出来ない


ヒーローというのは多忙な職業だ。出動要請があればそれが食事中や入浴中でも出向かわなければ行けない。そして、人気ヒーローには出動以外にも雑誌社の取材、撮影。地域のイベントなどにも呼ばれる。
つまり、寝る暇がないのだ。ヒーローの条件には何処でもすぐ眠れるというのが入っていると和希は思っている。そんなヒーローの為にヒーロー専用の仮眠室があるのはポセイドンラインに限ったことではないだろう。仮眠を取る為のその部屋は外の音を遮断するために防音で内側から鍵をかければ入ってこれない。和希はその仮眠室のベッドの上に押し倒され、マウントポジションを取るキングオブヒーローに冷たく見下ろされていた。

和希は自分の事を淫乱だと自覚している。気持ち良い事が好きだ。気持ち良ければ入れる方でも入れられる方でも構わない。しかし、なんでも良いという訳でもなくいくつか条件がある。
一つは相手が男であること、和希はバイセクシャルではあるがセックスするのは男の方が面倒なことが少ないので、セックスは男の方が良い。もう一つはセックスの主導権は自分が握ること。例え受ける側であってもリードは自分がとりたい。なので童貞や経験の浅い人間は和希の好むべき存在だ。ストレート相手のセックスも堪らない。

しかし、このキングオブヒーローは一つ目の条件をクリアしているが二つ目の条件はクリアしていない。和希は不機嫌を顕にしキースを睨んだ。

「和希、私は犬を躾けることは出来るけど君を躾けるのはどうも苦手でね」

普段穏和で青空を吸いとったような青い目が猛獣のようにぎらりと光る。その視線から目を反らそうにもそれが合図にに牙を向かれそうで目を反らせず相手から見れば上目遣いと取られようと睨むしか出来ない。

「だって、俺、犬じゃないし」

ベッドの上でマウントを取られているのに強がる和希はキースを挑発するような態度をとってしまう。しかし、キースは和希の虚勢を見抜いてふんと笑う。普段みんなといるキースでは想像の出来ない表情を浮かべ、和希を「躾ける」時だけキースは嗜虐的な事をするのだ。
和希の背中にぞくりと戦慄が走る。ゆっくりとネクタイの結び目に指を掛けられ引き抜かれた。

「そうだね。君は犬っていうより猫かな?」
「…っ」

手が伸び思わず身をすくめる和希の首元にキースの大きな掌が這うように当てられる。首筋から耳の裏を撫でられると和希はくすぐったさに身を捩った。

「やめ…」
「止めて欲しいのかい?」
「し、仕事中だろ!」
「午前の予定はキャンセルしたはずだよ?それに…」

キースの両肩を押し返す和希だが、ヒーローとして活躍する男を和希がどうか出来る訳もなかった。そんな和希の華奢な手首を掴みキースは口付けをして怪しく笑う。

「君、セックスがしたいんだろう?」

スーツとシャツのボタンを手際よく外されキースの目の前に和希の真っ白な肌が曝される。退こうにもびくともしないキースに脇腹からスルスルと触れられ和希がびくりと震えた。

「君のここはいつも誰かの跡があるね」
「んなの勝手だろ…っ」
「そうだね。君はみんなのもの、誰のものでもない。誰でも良いなら、私でも良いだろう?」

キースの指先が和希のデコルテに付けられたキスマークをなぞる。キスマークは一人に付けられたものではない。和希の色香にあてられたものたちによるものだ。無数に散るそれを一つ一つ星座を創るようになぞる。敏感な和希はそれだけで堪らず熱いため息を吐いた。

「もう、その気になって来たかい?」
「くっ…は…っ」

薄桃の乳首を人差し指で弾かれ歯を食い縛る。しかし、快楽に弱い体はもっととせがむように反応を強くしていた。悩まし気に眉間に皺をよせて息を吐く和希を見てキースは笑う。

「我慢してるのかい?和希らしくないな…」
「あっ…やめっ」

両方の乳首が人差し指でとんとん優しく刺激され勃ってしまう。羞恥に唇を噛みしめ耐えていたら口を指で抉じ開けられた。キースの男らしい長い指が和希の口内をゆっくりと愛撫するように動く。

「ふぐっ…ふぁっ…ひゃめ、ふぇ…っんん」
「おや、口の中も感じるのかい?和希は本当に淫乱だ。そしていやらしい」

上顎を擽るように撫でられたり、舌を指で挟まれる。唾液がキースを指によってかき混ぜられ口の端から垂れた。
もうこうなれば和希は自分を止める術を知らない。乳首と口内の刺激が背中を通り下半身へと伝わり窮屈さを感じていた。キースに跨がられているためどうすることも出来ない。しかし、無意識のうちにどうにかしようと内腿を擦り合わせその僅かな刺激でまた体の温度を上げていく。

「和希のよだれでベトベトだ」
「はあ…っ…ん…ふう」

口を愛撫した指を和希に見せつける。和希はその指をぼーっと目で追うことしかできなった。今和希を気持ちよくするのはこの指だけなのだ。その様子を見てキースは楽しそうにその濡れた指を和希の震える乳首へと押し付けた。

「あっあぁ」

濡れた人差し指で押し潰すようにぐりぐりぐりぐりと乳首を愛撫する。和希の体がびくりと跳ねるが構わずキースの人差し指は乳首を追いかけ続けた。

「気持ち良いのかい?」
「キース…っも、やだっ…あぁっやっ」

刺激され続けたせいで赤く腫れ、じんじんと甘いしびれが和希を襲う。快感が体を震わし、下半身へと集まっていく。キースを押しやろうとしていた和希の手が今ではすがるようにキースの服をつかんでいる。

「いや?ああ…こっちにもしてあげようね」
「ひっ…あっやだっ…あっあぁっ…だ、だめ…吸うな、ぁ…ひ、───っ」

片方の乳首を甘噛みされながら吸われ、もう片方をカリカリと刺激され和希は上体を反らしびくびくと痙攣した。

「っはあ…ひ…っはあ…」
「おや?」

呼吸を整えるために大きく息をしていると、キースが腰を浮かし少し下がった。そして、和希のベルトへと手を伸ばす。カチャカチャと金属が擦れ合う音を和希は他人事ように聞いていた。

「あ…っん」
「和希、乳首で射精したのかい?」
「…やめって、言った…のに…っ」
「聞こえなかったんだ」
「うそだ…」

色を濃くしたボクサーパンツをキースの人差し指で下げられる。精液で濡れた和希の自身を優しく撫でればまた勃ち上がってきた。

「あ…っも…」
「どうしたのかな?」
「う…」
「う?それだけじゃ解らないよ?」

扱くというより自身全体に精液を広げるような愛撫に和希は焦らされていた。後孔が疼き新たな快感を体に欲しい和希はキースに促されるままごもごもと口を開く。

「後ろも…して…っ」
「後ろってここの事かい?」

中指が待ちわびたところに触れた。無意識のうちに指を招くようにきゅっと締めてしまう。

「あ…」
「んー」
「早く…」

待ちきれなくて腰を揺らしてしまう。ゆっくり焦らされるようにスラックスを脱がされればそれだけで堪らなくて体が揺れた。ぎらぎらとした瞳と目が合えば自然と足が開いていく。

「さわって…」
「触るだけでいいのかい?」
「あっ…や、やだ」

唇を噛みしめ首をふるふると横に振る。もう熱く疼いて仕方ないここに痺れるほど激しく突いて欲しい。しかし、それを言葉にしたら相手の思う壺だ。自分だけ乱れてるのが恥ずかしい。

無言の攻防先、時間が経てば経つ程言い出しにくい。そんな沈黙を破ったのはキースでも、和希でもなかった。キースのPDAが光ながら鳴ったのだ。

「おっと、出動要請だ」
「うそでしょ…」

和希はがっくりと項垂れた。散々焦らされて出動要請の為キースは行かなくてはならない。
このやり場のない熱を自分で処理しないといけないなんて!和希は苛立ちながら上体を起こし、快感を待ち望んでる自身を掴んだ。

「早く行けよキングオブヒーロー」
「そうなんだが、和希何をする気だい?」
「何ってマスかくんだよ」
「…駄目だ、それは駄目だ」
「えっ…ちょ、うおっ」

一度は和希の上から退いたキースだが、自身を掴んだ腕を捕まれ身体を反転させられた。一瞬何が起こったのかわからず抵抗が遅れたが後ろ手にネクタイで縛られてバタバタと足を動かす。

「キースっふざけるな!なにしてんだよっ!やめろ!」

我を取り戻し暴れる和希に構わず後孔にローションが垂らされた。直ぐに指が侵入して和希は目を見開く。

「あ…っあ…いっ」
「言ったじゃないか。躾直すって」

指がぐるりと拡げるようにいこのまま挿入されるのかと思った。しかしこのキングオブヒーローは出動要請を無視するはずもない。和希は拡げられる感覚にぞくぞくとまた熱が籠ってくる。その時キースが一瞬離れそのあと直ぐに後孔に何か宛がわれた。

「あぁ、あっやっく…っ」
「おあずけだよ、和希」
「おもちゃ、やだっ…抜いて、抜いてっ」
「和希が粗相をしないようにここも縛ろうね」

そういうと、立ち上がった自身の根元を紐で縛られる。あっという間の出来事に和希はなにもできなかった。

「うそ、やだっ、ほどいっああああっ」

後ろのキースに振り向いて抗議するが、急に後孔に入っていたバイブが震えだし和希の前立腺を刺激を開始した。和希は耐えきれずそのままベッドに顔を埋め喘ぐ。直接性感帯を刺激されてるにも関わらず、射精を止められた為痺れるような快感が全身にまで襲う。だらだらと先走りが溢れる自身がシーツに触れ身体が揺れる。その度に後ろに力が入り快楽の無限地獄に和希はただただ喘ぐだけしか出来ない。

「やああぁっ、これ、これ止めてっだめっ…あっあっあん」
「だめだよこれはお仕置きだからね」

キースは和希の頬を撫で耳元で囁いた。

「私が帰ってくるまでいい子にまってるんだよ」
「うっ…むり、できな…っああっ」

キースは和希の頭何度か撫で仮眠室のドアへと歩く。和希は絶望と快感に震え涙を流しながら懇願した。

「あっあぁ…キースっキースっ…やだっやだやだ…いかないでぇっ、…っも、しないっ、いうことちゃんときくからあ…っやだこれぇやめてっキース…ッ」
「和希」

低い冷たい声にビクッと身体が震えた。涙でキースの表情は見えない。

「待て」

手の平をかざして言う様は犬にするそれと同じだった。バタンと防音の為に普通より分厚い扉が開きキースは出ていった。

キースが戻ってくるまで後約2時間和希は快楽地獄を味わうことになる。




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