雄猫は雌猫に発情を誘発される


「イワン今日も可愛いねキスしていい?」
「いやです」

トレーニングセンターでベンチに座っているイワンに朝の挨拶として軽いキスをする。そして頬を打たれるまでが朝の挨拶。パンと乾いた音がトレーニングセンターに響いた。

「なんでキスするの!?毎回毎回!やだっていってるのに!」
「だってイワン可愛いし、ロシア人って男同士でもキスするらしいじゃん。あと俺は可愛い人の困った顔と怒った顔が好きなの」
「なっ」

ジンジンする頬を擦りながら答えるとイワンがさーと引いてるのが解る、一歩下がるイワンに俺は二歩前に出た。怯えるイワンを嘲笑うかのように肩掴むとふるふると紫の瞳が揺れた。本当可愛い。食べたい。犯したい。

「ちょっとやめて下さい。何してるんですか」

あともう少しで唇がふれるというところで後ろから肩を引かれよろけた。するりとイワンが抜け出し声の主の後ろに隠れる。

「バーナビー、おはよう。虎徹もおはよう」
「おはようじゃないですよ、和希。あなた今先輩に何してました?」
「何って、朝の挨拶を」

しれっという俺にバーナビーは深くため息を吐いた。ああバーナビーは綺麗だなあ。綺麗な人は泣き顔が好きだなあ。

「挨拶って…、さっきのはセクハラというんです」
「へえシュテルンビルドって難しいね」
「お前が居た国でも多分セクハラだぞ」

虎徹は呆れてる姿もかっこいいのか、あー興奮してきた。イワンはバーナビーの後ろに隠れ虎徹に頭を撫でられてる。

「毎回毎回折紙先輩を困らせないでくださ」

バーナビーが言い終わる前に口を塞ぐ。小言を言われてイラついたのとイワンとの邪魔をされたお返しに深く口付けた。抵抗されても頭を押さえつけてさらに深く口付けるとバーナビーの吐息が甘いものへと変わる。ちょろい、こいつも童貞か。

「だー!ちょっ、お前何やって…!」
「ん?イワンの代わりにバーナビーが俺の相手してくれるんじゃないの?」
「…」

ショックで目を見開いたままのバーナビーに上目遣いで訊ねる。少し掠れた声が我ながらエロい。童貞に効果は抜群なはずだ。だってイワンも顔真っ赤だし。

「バーナビー…和希にバーナビーの童貞ちょおだい…?」

そしてそのあとバーナビーのバージンも戴こう。首に腕を絡ませて腰を刷り寄せてわざとらしく息を吐く。あ、ちょっと勃ってるこいつ。あともう少しか。

「だーっ!ストップ!ストップ!」
「もがっ」

バーナビーが俺に口付けをする寸前で虎徹が俺とバーナビーの口を手で塞ぎ、そのまま戸を開けるように引き離した。

「…っ、ぼ、僕は童貞なんかじゃない!」
「バニー涙出てるぞ」
「か、和希エロ過ぎ…」
「折紙鼻血出てるぞ」

流石虎徹は既婚者なだけあって平気か…。あ、でもバーナビーの泣き顔見れた嬉しい興奮する。息を吐いたら口元を覆われている為熱い息が返ってくる、ヤバい本当にムラムラしてきた。
バーナビーの首に絡めていた片方の手で虎徹の手首を掴み。口元の拘束をときそのまま指に舌を這わす。

「っ和希、おま…っ」
「…んっ…ちゅ、ふ」

指の間を見せ付けるように舌で舐めたり、節だった指をあま噛みしながら虎徹を見るとゴクリと喉がなったのが解った。
イワンは耳まで真っ赤になった顔を覆っているし、バーナビーは鼻血が出ていた。あとで舐めてあげよう。

「遊んでよ」

虎徹を挑発するように妖しく微笑めば虎徹の目にチリリと欲が光るのが解った。よし、かかった今日は虎徹と。

「甘いな」

虎徹の手が頬に伸びその心地よさに目を閉じた瞬間額に激痛が走った。脳が揺れた気がするし額が凹んだ気もする。ゆっくり目を開けると虎徹がピンと伸ばした人差し指をこちらに向けて笑っていた。

「いっ…たいじゃないか!」
「ガキの誘いなんておじさんには効かねーんだよ」
「ガキって…22歳だし!社会人だし働いてるし!」
「まだまだだな」

額を擦りながら虎徹に抗議するが、虎徹は鼻で笑うばかりだった。悔しい、絶対泣かす!虎徹にはネコかなあって思ったけど絶対犯す。

イワンとバーナビーも意識を取り戻し俺のムラムラもどっかに行ってしまった。本当に悔しい!

「はあ、今日こそイワンのバージンとバーナビーの童貞を戴けるとおもったのに」
「ひっ」
「僕は童貞じゃないって言ったでしょう!」
「じゃあバーナビーのバージン」
「僕は童貞です」
「バーナビーお前…」


入れられるより入れる方がいいのかバーナビーはあっさりと童貞であることを認めた。俺はベンチに座り項垂れる。

「なんで駄目なんだ…能力も使ってないのに…」
「お前に倫理を教えるの大変そうだな…」

虎徹と同時にため息を吐いた。するとセンターの扉が開く音がした。そして直ぐに聞き覚えのある声が聞こえる。

「和希!こんなところに居たのか!探した、とても探したぞ!」
「げっ」
「おー、スカイハイ良いところに」

私服のままトレーニングセンターに現れたのは俺の天敵でKOHのスカイハイだ。そして俺はこいつのマネージャーなわけで。

「やあ、みんな!おはよう、そしておはよう!どうしたんだい!?鼻血なんか出して!もしかして和希が」
「なんもしてないよ」
「も、もっと早く来てくださいよ!」
「なんもしてないから」
「そーだぞ、危うく折紙のケツとバニーちゃんの童貞が奪われるところだったんだぞ」
「でもなんもしてないから」
「そうですよ、おじさんなんか指フェラされて」

それはしました。

畜生、こいつらベラベラベラベラチクりやがって…。いつかまとめて犯してやる!精液枯渇させてやる。お前らにとってはキングかも知れないが俺にとっては魔王なんだよこいつは!!

下手に言い訳したらもっとチクられそうなのでベンチに座り両手は膝の上でぐっと我慢する。社会に出るとね、自分の意見が通らないことの方が多いんだよ?

「なんだって!それは悪かったね!…和希君はなんて悪い子なんだ」
「…ッ」

ほらほら!今こいつ覗き込んでるから三人には見えないかも知れないが、目が笑ってないんだって!魔王なんだって!

「能力を使ってはないだろうね」
「使って、ない…」
「そうか」

冷たい目は絶対服従を強いられる。みんなはこいつはヒーローでもそうじゃないときでも天然キャラって思ってるかも知れないけど、違うんだ。誰も信じてくれないだろうけど。

「迷惑かけたね…。和希には後できつく叱っておくから君たちはトレーニングに戻って欲しい」
「…わかりました。でもそんなに怒らないでやってくださいね。悪ふざけの延長ですから…多分」
「和希…さっきは叩いてごめんね」
「俺もデコぴんして悪かったな」

バーナビーフォロー入れてくれてありがとう。他の二人もありがとう。俺死んでも忘れない。

さようならは言わないナリよ…!

「和希」
「…はい」
「今日のスケジュールは?」
「午前中は本社での報告書作成、12時からはスポンサーと昼食、14時からは雑誌のスチル撮影でスタジオへ17時に撮影終了予定です」
「午前の予定はキャンセルだ、そして…」

頭に入れていたスカイハイのスケジュールを述べる。すると両手を引かれるまま立ち上がりキースに飛び込む形になる。すると耳元にキースの口が当てられ囁かれた。

「和希、君を躾直そう」


嗚呼、終わった。
俺、終わった。

俺はキースに肩を抱かれたままトレーニングセンターをあとにした。



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