試着
「っと…こんなもんかな?」
姿見の前で、和希は自分の姿を確認した。
「なんか、胡散臭いマジシャンみたいなんだけど…」
黒を基調とした燕尾服、シルクハットに巻かれたリボンにスポンサーロゴ、顔半分を覆うようにファントムマスクを付けてくるりと回る。
ヒーローというか悪役に近い。ファントムマスクのせいだろうか。
「顔半分以上出てるし…」
しかし、スーツ自体はとても動きやすく軽い。アタッシュケースに入っていた書類によると防弾、防水など多機能らしい。有難い話だ。
不安要素は今に始まったことじゃないかと和希は思うことにした。
スーツを脱ぎ、畳んで元に戻して和希は携帯を取った。
新しいバイト先であるヒーロー達のトレーニングセンターはジャスティスタワーにあるらしい。和希の住んでるところからは交通機関を乗り継いで1時間半程かかる。昼過ぎに行ってくれと言われているからもう出発しなければいけない。
ジャスティスタワーに行ったら、ヒーロー達もいるだろう。
いよいよ、イワンに会える。嬉しい、やっと会える。
なんて言葉を掛けよう。
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