世界一馬鹿


神楽の結婚式に参列する沖田。
※モブ神


 招待客のような、護衛のような、宙ぶらりんの存在だ。それでもよくある式とは違って血族はほぼおらず、会場は他人で埋め尽くされているから浮いているわけじゃない。ヴァージンロードを挟んで並んだ、聖壇に向かって左側の席に座るのは、お姫様やら人斬りやらオカマやら宇宙人やら、チャイナの門出を祝いに駆けつけた面々で混沌としていた。
 招待状は届いた。俺には結婚式に呼んでくれるような友達はいないので、机上に置かれたそれを見てはて、と首を傾げ、差出人を見ると「神楽」とある。その隣には誰か男の名前が書いてあったが忘れた。知らない男とそれなりによく知っている女の連名で俺宛に届いた上質な紙を、六遍くらい読んで、チャイナが俺を結婚式に招待しているらしいとわかった。そしてまた、はて、と首を傾げた。
 俺が結婚するとしてチャイナを招待するだろうか。しばらく考えたものの、俺が結婚すると言う前提そのものもが破綻していていまいちピンと来なかった。
 そのまま出席にも欠席にも丸をつけず放置していたら、そよ姫が参列すると言うので否応なしに出席することになり、招待状は依然俺の部屋の机上にぽつんとある。
 荘厳な音楽と共に(結婚式でよく聞くやつだ)背後の扉が開き、本日の主役である新郎新婦が入場する。ヴァージンロードを歩くのは新婦と父親だとばかり思っていたが、ハゲと天パの宇宙戦争が始まるのを防ぐためこの形を取ったらしい。しゃなりしゃなりとベールを引き摺りながら歩くチャイナは、肌もドレスも真っ白で、ステンドグラスの光を浴びたところが色とりどりに染まっていた。俺はチャイナがこの長いドレスの下で慣れないヒールにブチギレている心中を察して楽しくなった。
 澄まし顔で登壇する時、裾を踏んでつんのめったチャイナが、新郎の腕にしがみつき、はにかんだ。それを見て俺はようやくこの女が嫁ぐのだと気づく。瞬間、どうしようもなく手放すのが惜しいような気持ちになったが、もともと手中になどいなかったのにそう思うのもおかしな話である。
 隣で姫様が、神楽ちゃん綺麗、と心底惚れ惚れしたように呟いた。誰かと幸せになることを決めたチャイナは綺麗だった。しかし、泥だらけでも埃まみれでも、着古したチャイナ服を纏っても、チャイナは何かのために戦う姿が一等綺麗だった。これからもそれは変わらないのだろう。この男のためなら戦えると思って結婚したのだろうか。
 そんなことを考えるうち、一回くらい抱いときゃよかったと思わないでもなかったが、チャイナに勃つかと言ったら微妙なところだ。
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男女として結ばれなくても神楽の一番綺麗な瞬間を知ってるのは沖田であって欲しい。
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