南蛮の武器を取り入れ、他国に売る。
巣鴨の国がこれまで強国に落とされること無く、生き残った理由である。
貿易に長けている巣鴨の一族は、南蛮の言葉を巧みに操り、屋敷に篭りっぱなしだった和茶にも引き継がれていた。
並んだ武器をゆっくりと吟味する家康を眺めながら、和茶は小太郎の頬を何度もつついて遊ぶ。
NOと言えない日本人。小太郎はYESも言えない日本人だった。
これは幸いと遊びに興じる和茶の性格は捻じ曲がっている。
佐助とかすがは内心思ったが、顔に出さず和茶の横で護衛を続ける。
「これは凄いよ、一回に何百発の弾が出せるんだ。忠勝君も危ういかもね」
「忠勝に取り付ければ良い話だろう」
「……!」
NOと言えない日本人がもう一人いた。
和茶は忠勝に意味深な笑みを投げかける。
家康は忠勝に取り付ける武器探しをしているらしく、プラズマ砲など派手な武器に釘付けだ。
種子島と呼ばれる火縄銃だけでなく、ガトリングやプラズマ砲が混在している時点で時代がおかしいと突っ込まれるかもしれないが、マントで攻撃してくる人間がいる世界だからと言い訳させていただこう。
小太郎の頬をつつき飽きたのか、親指と人差し指で挟み伸ばして遊びはじめる和茶。
こうなったら耐久レースである。感情を全く見せない小太郎は何を考えているのか。
小太郎にしか分からぬ問題に、スルー検定1級の家康による見事なスルーが発揮される。
「プラズマ砲、値段ははるが忠勝にぴったりの武器だな……」
「友達プライス30万両にしてあげるよー?」
「50万をか!? 忠勝喜べ、これで第二形態の構想が固まったぞ!」
「……!」
忠勝は首を横に振りたくて仕方が無かったが、必然か偶然か、首を固定され縦にしか振れない状態に陥っていた。
和茶も小太郎で真似しようした結果、腕は空を切り、和茶の背後を風が通り抜けた。
体よく表現したが、簡単に言えば逃げられた。それだけのことである。
いかがわしい質問攻めしてやろうと思ったのに。
和茶は年の割には全く恥を知らぬ人間だった。
伴侶を取ることなく、この年まで屋敷に篭っている時点で後ろ指さされてきたのだ。
今更、というのが和茶の考えだった。
いざとなったら忍でも娶ろう。
和茶はどこまでも楽観的であった。
「だが、部下にあまり無駄遣いをするなと……」
「プラズマ砲買ってくれるならガトリングも付けちゃうよ」
「買った!」
対し家康はどこまでも直感的であった。
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