弐拾弐
流石にこの格好のままでうろちょろしてたらいけないよな。
とりあえず部屋に戻るか、りんちゃんや他の女中さんに知恵を借りるか。
「なっ、おま、な…」
思案していると聞き覚えのある声。
言葉にならない声の出所を探れば、真っ赤な顔の才蔵が口をパクパクと開閉し、こちらを指さしていた。
寝間着ってことはさっきまで寝てたのか。
「おはよ、才蔵」
「な、んて格好して! 〜〜っ」
「まだ酒残ってんだろ? 酒弱いなら無理して飲まなくてよかったのに」
倒れるまで飲むってよっぽどだ。
自分の叫んだ声が思ったより響いたのだろう。頭を抱え、声を漏らす。
昨晩は同僚に付き合わされ随分呑んでいた。
私なんか一日寝たらアルコール抜けて、化け物に戻ってたよ。
「大丈夫? なんなら部屋まで運ぼうか?」
「むしろお前が戻れ。長と一緒に桶狭間に行ったと聞いていた筈だが、何をどうしたらそんな姿になるんだ」
「濡れた体に濡れて破れた布を巻きつけたら」
「そういう意味じゃない」
今にも怒鳴ってきそうな剣幕なのにそうしないのは頭痛が酷いからか。少なからず顔色も悪い。
二日酔いには水分と糖分を同時に摂取出来るスポーツドリンクが効果的らしいけどこの時代にはないしなぁ。
この時代での最もポピュラーな療法はなんだっけ。
「才蔵、甘いもん平気?」
「あぁ」
「じゃあ一寸待ってろ。良いもん持ってきてやるから」
「その前に着替えろっ」
「あ」