弐拾壱
気分は最高潮。
まだ曇り空は続いているが、それでも風を切って飛ぶというのは気持ちいい。
感覚は無くても、視界で楽しむことなら出来る。
地面が遠く、空が広く見えた。
現代ならスピード違反で捕まりそうな速度で飛び続ける忠勝。
はじめは渋っていたが、良心や責任感やらをつついてやればあっさり折れた。
え? 罪悪感?
はっはっはっ、何ソレ? おいしいの?
風ではためく髪は、ほとんど乾いている。
濡れた服もそこまで湿りを感じなかった。
若さっていいね。肌が水を弾くから!
……うん、調子に乗ったことを謝ります。
このまま破れた着物も直ればいいのに。
なんて小さく溜息をつくと、速度がぐんと落ちる。
下を見ると城に繋がっている森(前に修行した場所だ)が見えた。
流石に城までは送ってもらえないよな。
ま、それでも十分。
ゆっくりと降ろしてもらい、すぐに飛び立とうとする忠勝を呼び止める。
「ありがとうな。あと脅しちゃってごめん。今度改めてお礼とお詫びにいくから」
「……」
プシューと機械音が返事に聞こえた私は末期なのだろうか。
だが、確かに届いた言葉に微笑む。
少し間を置いて忠勝は飛び立った。
次の瞬間強い風が襲う。機械音が遠くなった。
小さくなった忠勝の姿が、本当に見えなくなるまで私は手を振り続けた。
さぁて、私を置いてった佐助にお仕置きしなきゃなぁ?