弐拾

布片と化してしまった着物を伸ばすと、大きく裂けた跡。
切られたとか言って誤魔化せないかな。
いや、その前に私着る服ないよ! いくら私でも素っ裸のまま歩くのは耐えられない。

町に出たら捕まること間違いないし。
私にどうしろっつーんだ。

佐助の名前をさっきより大きな声で叫ぶが、やはり反応無し。
このままじゃ素っ裸で捕まるか、川の精になるしか道がないじゃないか。

破けた布をそれらしく身体に巻きつけると、意外と様になってる気がする。



「貴方が落としたのは、銀の斧ですか。それとも金の斧ですか?」


≪ヴィーン≫


「悪いけど日本語じゃないと分からないなぁ。……って、えぇ!?」



背後の機械音に振り向けば、かの有名なモビ●スーツ……ではなく本多忠勝がいた。
困ったように視線を泳がす忠勝に、私は自分の格好を思い出す。
絶対領域とかそんなレベルで片付けていいものなのだろうか。


本多忠勝も男なんだね。
恥ずかしがるなんて、可愛い奴。


じゃなくて!!



「本多忠勝……だよな?」

「……」

「家康ならもう徳川に戻った筈だよ。安心しな」

「……」

「あ、ちょっと待て!!」



私の言葉を信じてくれたのか、安心して戻ろうとする忠勝を呼び止める。
折角人(?)にあったんだ。ここで逃がしてたまるか。

私の姿を見ないように手で眼を覆い、振り向く忠勝に悪戯心が揺れ動くが
今の目的はただ一つ。

無事武田に戻ること!


「忠勝、見たよなぁ?」


何を、とは言わない。
どうせ分かっていることだ。
忠勝はかなり困っているらしく、機械音がさっきから五月蝿い。

纏っている服を固定するため、軽く結び、忠勝に近づいた。
近くで見るとかなりでかい。
私の倍、いやそれ以上あるな。

びしぃっと人差し指をつきつけ、にやりと笑った。



「責任とって貰おうか」



戦国最強の本多忠勝が小娘の言いなりになる。
今だけは私が戦国最強を名乗らせてもらうよ?


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