拾壱
「あー、ヤバイ気持ち悪い」
「初めて黒兎と気持ちが一緒になったかも。俺もかなり気持ち悪い」
「え、佐助ってばつわり!? 誰の子!? もしかしてこの前の…」
「誤解招くようなこと言うな! てかなんで俺様が孕まなきゃいけないの!?」
忍びのやることさ。なんでもありだ。
なんてボケをかましてる場合じゃないな。
目の前でうじゃうじゃと、いや、おじゃおじゃと蠢く今川(影武者)の大群。
これが佐助の分身とかだったら、全員まとめてお持ち帰りなんだけど。
今川を押し倒しても、襲っても、全然楽しくないっつーの。
しかもその楽しくない奴が大量発生。本願寺のマッチョ並の気持ち悪さだ。
さっさと終わらせよう。
「佐助、あとは私一人でやるよ。暫くは被害に遭わないところで待ってて」
「りょーかい」
「……一人で行くなんて危ないよーとかの心配の一言とかは?」
「どうせ心配し損だろうし。黒兎一人で十分なんだろ?」
「愛の以心伝心ですね、分かります」
「単純脳細胞が何を言う」
「嫁が冷たいっ! そういうプレイなのか!?
佐助のSはドSのSなのね! それはそれで燃える!」
「訳わかんないけど、くたばれ」
「訳分からないのに辛辣だな。じゃ、行ってきます! いってきますのちゅーよろしく!」
「ちゅー」
「ちょ、ちゅーとか言いながら目潰しってなに!? 私にどんな新境地を開かせるつもり!?」
真っ直ぐに両の目狙ってきたよ!? しかもくないで!!
私だから寸前で止めることができたものの、暫くお待ちくださいってなるとこだったじゃん!
佐助の生ちゅーが聞けたから許すけど。
あんな至近距離でくない(しかも刃先)を見るとは思わなかった。
私のくりんくりんな可愛らしい瞳が潰れるとこだったよ。
あ、うん、調子に乗った。だから睫毛を切ろうとしないでハニー!
「適当にがんばりな」
「佐助モナー」
笑顔で別れ、私は鎌を出す。
おじゃおじゃと群れるマロ如きが、私の愛を止められると思うなよ?