私の記憶が正しければ徳川家康は今川義元に捕まり、人質となった。
その時今川の娘と結婚させられ、事実上今川の配下となってしまったのだ。
その後桶狭間で今川は織田に討たれ、家康は人質生活から解放。
織田と同盟を組み、互いの娘を結婚させた。


「そこで、だ」


黙って歴史の一部を聞いていたお館様は興味深げに目を細めた。


「私が家康を奪い返すんだよ。織田よりも、本多忠勝よりも先に。
そうすれば家康は武田に恩義を感じる。自然に力を貸してくれるだろ」


全ては正義を象った策略。
こちらが誘拐して不信感を煽るよりずっとマシだ。


「お主の作戦、乗ったぞ。佐助はどうじゃ?」

「そりゃあ乗らないわけないですよ。
大将の決めた事に逆らえるわけないし、第一面白い。
単なる煩悩馬鹿かと思ってたけど、やるねぇ」

「失礼な! 私から煩悩を取ったら楽しくないだろ! でも褒められたから許す!」

「単純な奴。で、今川に浚われる時期とか分かるの?」

「大体は。お館様が任務を命じたからもう浚われてる頃じゃないかな。
今から出た方がいいかも。最短距離でどの位かかる?」


佐助は一瞬目を見開いたかと思えば、ニヤリと自信満々な笑みを浮かべた。


「俺様をなんだと思ってんの?」

「目立ち過ぎな忍」

「え、なんかさりげなく毒吐いたよね」

「はははははは、気ノセイダヨ?」


でも真実だよな。
棒読みでフォローすれば、若干落ち込んでる気がした。
たまにはこんな佐助を見るのも良いなぁ。萌えるなぁ。


「で、佐助はどんな働きをしてくれる?
忍の本気見せてみろよ」


ニヤリと笑ってみせれば、つられて佐助も笑う。
さて、馬で走っても数日はかかりそうな距離。忍はどれだけ短縮出来るか。

佐助は自慢げに胸を張ると、


「聞いて驚くなよ。なんと俺様「話してる時間が勿体無いからさっさと出るぞ」


私のサディズムが発動したせいで、言葉を遮られた。
駄目だ。可愛すぎる。
やっぱ弄られるより弄る方が良いよな。

お館様に行ってきますと笑顔で別れ、女中さんや小姓にも声をかけると、落ち込んでる佐助を無理矢理説得して武田軍にサヨナラグッバイ。
佐助の凧に乗り込むと、すぐに地面が遠くなる。


凧が二人分の体重を支えたことに感動して素直に喜べば、拗ねつつも嬉しそうな佐助に再び萌えた。

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