「私もなんか仕事貰いに行こうかな」


徳川に向かうやつとか、と欲望丸出しの発言に佐助がピクリと反応した。
ん? 不思議に思い佐助を仰ぎ見る。

上辺だけの笑みを浮かべ、佐助は躊躇するように繰り返す。


「徳川?」

「あぁ、まぁ無理でも休暇とか言って行くつもりだけど」


佐助は少し間を置いた後、貰えるんじゃない? と曖昧に笑った。
歯切れの悪い佐助に首を傾げるが、幸村におかわり、と皿を渡された為思考が妨げられる。

おかわりって、幸村どんだけ喰うつもりだ。

伊達に貰ったずんだ餅。あまりに大量に貰った為、お館様や佐助、お世話になってる女中さんに配った上で幸村にあげたのだがそれでも糖尿になりそうな量だった。
大層気に入ったらしく、伊達政宗に長々とずんだ餅の感想を綴った手紙を送ると、喜んだ政宗からレシピを送ってもらったのだ。
佐助が苛立ちを隠すことなく、私に八つ当たりしながら作ったのが今幸村が食べているコレ。
甘味相手ならそれこそ戦国最強の兵と名を残しそうな幸村の食べっぷりに見ているだけで胸焼けしそう。

意外と甘い物好きの男の人は多いが、幸村は異常だと思う。
異常な体を持った私が言えることじゃないけど。

「旦那、あんまり食べ過ぎると太るよ」

「む、しかし腐ってしまってはいかぬからな」

「今日明日で腐らないって」

「黒兎殿に食べられるかもしれぬ」

どんだけ食べたいんだ。
名残惜しそうにずんだ餅を見つめる幸村に、佐助は頑なに駄目だと叱る。
小十郎はお袋さんだけど、佐助はおかんだな。


「幸村、私は絶対食べないから」

「真か。嘘ついたら槍千本飲ますぞ」

「どんな脅迫!? 針千本よりもタチ悪いな! 嘘ついたら飴あげるから、槍は無し」

「良いだろう」


いいのかよ。
単純な幸村が少し心配になりつつも、仕事を貰うため、部屋を出た。
遅れて佐助も出てくる。監視かな。
いや、監視にしては堂々としすぎてる。

私の少し後ろをついていく佐助。
なんか見たことあるんだよなぁ。


そうだ


「夫の少し後ろを歩く妻だ!」

「はぁっ!?」

「古き良き妻万歳!」

「いちいち抱きつくな!」


抱きついた格好のまま引きずられ、お館様の待つ部屋に。
私らの姿を見たお館様は目を細め、若いのぅと笑った。


「ワシがあと数十歳若かったらの」

「今のままでも充分過ぎるほど男前だよ、お館様! 抱いてほしかったらいつでも呼んで!」


そう叫んだ瞬間、抱きついても抵抗しなかった佐助からくないが飛んできた。
……私じゃなかったら死んでだよ。
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