拾弐
私らが武器を持っていないと思ってたのか、
武器を取り出した私らに戸惑う兵卒達。
まぁ、才蔵はともかく私は何も無いところから鎌を取り出したからな。

殺意はないとしても、この武器はキツイか。
かといって素手で間に合いそうにも無いし。
ビビらせれたら儲けもんだ。ついでに自分の着てる服を見せ付けるように捲る。
例え学が無い者でも、これが上等なものだというのには気づくだろう。


「これ、成実様のもん」


捲ったところには伊達の家紋の刺繍が施してあり、兵卒たちが更に動揺したのが手に取るように分かった。
かといって退く気配は無い。
私ら、いや私がそんなに気に食わないのか。ちょっと凹むな。

あとは才蔵に叉遊に化けてもらっての色仕掛けしかないぞ。
でも濃姫やかすがでも無理な相手だからな。
あ、でもいつきは殺さなかったから伊達軍はロリk


「てめぇら何客人相手に刀抜いてるんだ!」


危険な結論に辿り着きかけたところで、小十郎が乱入してきた。
あ、牛蒡と葱持ってるよ。しかも何人かの兵卒(のリーゼント)に刺さった。
あれで斬られたら痛い上に、屈辱的だろうな。
それを言うならレコードやハリセン、釣竿とかもだけど。

だが、小十郎の姿にはいまいち迫力が足りない。
それはごぼうとねぎのせいだろうか。
それとも身に纏っている割烹着のせいだろうか。
不覚にも萌えたが。

遅れてトタトタと重長がついてくる。
体の大きさに反比例した大きな鍋を持って、危なっかしい。
才蔵が手伝おうとしたが、断られていた。
武士になるための修行らしい。微笑ましいなぁ。

そういや政宗の姿が見当たらない。
辺りを見回しても、政宗の姿は見当たらず、少し不安になる。
私は兵卒たちを叱る小十郎に尋ねてみた。


「政宗様は『friendに夕餉をご馳走する。coolじゃねぇか』と仰ったっきり厨房から出てこられない」

「それ政宗の物マネ!? 政宗より格好よかったんでもっかいお願いします!」

「政宗様を愚弄するたぁいい度胸じゃねぇか」

「言葉と行動が噛み合ってないよ」


ガン飛ばしながらも鍋をよそってくれる小十郎に、とりあえずつっこんでおく。
少なからず喜んでる小十郎に萌えてると、重長が横にちょこんと座った。
手伝いが終わったらしい。


「重長もよそってやろうか。何が好き?」

「と、鳥団子と、白菜と……」

「椎茸は?」

「茸は好かぬ!」

「重長、好き嫌いしねぇって約束だろ」

「うぅ。だが、茸はどうしても好きになれぬのだ」


重長の今にも泣きそうな顔に小十郎の言葉が詰まる。
やはり実の子には弱いのか。
小十郎の意外な一面を見つけ、よそってもらった人参を食べる。

……う。
こ、この身体味覚感じないんだった。
何も味がしない人参をほとんど噛まずに飲み込むと、私はこっそり才蔵の皿に残りを移した。
だが、それを目ざとく見つけた重長が叫ぶ。


「黒兎も残しておるぞ!」

「なにぃ!?」

「お、私は……えと、お腹空いてなくて」

「そうなのか? お前昨日からそう言って何も食べてないだろ」


才蔵にも心配そうに尋ねられ、私は目を逸らす。
嘘はついてないが、気まずいもんは気まずい。空腹を感じない身体。
それでも政宗の手料理、私だって食べたいさ!
だが、味のしないものは美味しいも不味いもなく苦痛しか伴わない。

私にどうしろって言うんだ。


「ったく政宗様に何て言うつもりだ」

「私から謝る。言わなかった私が悪いし」

「当然だろ。だがな、政宗様は傷つきやすいんだよ。
この前も俺が政宗様と野菜どちらが大事かと問われて、一日考える時間をくださいと言っただけで一週間落ち込んだ」

「小十郎も十分酷いよ! 嘘でもすぐに政宗って答えてやろうよ!!」

「嘘偽りの無い素直な野菜たちを裏切れって言うのか!?」

「え、裏切ったんだよな!? もしや政宗じゃなくて野菜が大事って答えたの!?」

「どちらも同じくらい大事だが、政宗様の方がゴボウ三本分上だとお答えした」

「基準わからない!! 普通に政宗の方が大事って答えろ!」


政宗に同情するよ。
ボケ無法地帯か、伊達軍。
本気で答えているところが怖い。

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