捌
冗談じゃない
口には出さなかったが、目は口以上に語る。
睨む小十郎がそう言ってる気がした。
私が斬っても死なないから。
怯えているようには見えないが、嫌悪感を抱いているのは確かだ。
得体がしれない奴と主を戦わせるわけにはいかないと思案しているのが見えた。
「政宗様の手を煩わせるわけにはいきません。この小十郎が…」
「じゃんけんほい」
「くっ、こんなとこでやられるとは…っ!」
「実は小十郎めんどくさがってる?」
反応が投げやりすぎるよ。
私の行動も投げやりだったかもしれないけどそりゃないよ。
今までシリアスな展開だったからシリアスな考えを持ったシリアスなキャラで行くのかと思ってたのに。
もしかしてギャグに走るのか。
小十郎がボケ属性だとは……思ってたけど。
うん、出会って十分程で気づいていたよ。
「で、何で勝負するんだ?」
「叩いて被ってじゃんけんほいにしようぜ」
「いいの?! マジでそれでいいの?!」
政宗もボケに!?
真剣勝負とかじゃねぇの!? 真面目な戦闘シーンがあるかと身構えてた読者に謝れ!
「それとも斬ってかわしてじゃんけんほいにするか?」
「じゃんけん好きだね。する友達いないの?」
「ち、ちげーよ! 百人ぐらい居るに決まってんだろ!!」
「お前ら適当すぎだろ! 黒兎も同盟がかかってんだぞ、真面目にやれ!」
やっとつっこんでくれたな、才蔵。
君がツッコミを入れてくれるのをずっと待ってた結果、政宗の友達が居ない疑惑が真実になってしまったよ。
「才蔵、ちょっくら私に賭けてみない?」
こっそり耳打ちすると才蔵が疑わしそうに睨んできた。
政宗を嫁に出来なくなるし、勝負自体無くなるが、じゃんけんだと完璧に運。
運命の女神様に鼻であしらわれて負けたりしたら、政宗を殺すことになるだろう。
それほど同盟を組むことは大事だ。
「政宗、」
「てめぇ政宗様と呼べと……」
「友達になってくれないかな」
セコいと言われるかもしれないが、これも戦略の一つ。
実際政宗の心に響いたらしい。
嬉しそうに、かつ照れくさそうに笑う政宗に興奮したのは言うまでもない。