「嫁に来ないか」

「お前の頭の中はそれしか無いのか!」

「のぐっ」


ようやく政宗への謁見が許されたわけだが、着流しの姿にノックダウン!
上座で胡座をかいてキセルを吸ってるんだよ? Sっぽい笑みを崩したいなんてドS心が働くし。
思わずプロポーズし、今に至る。
舌噛んじゃったよ。


「oh、crazyな奴だな」

「政宗はデリシャスだな」

「南蛮語が分かんのか? 使い方は違うが」

「えー、じゃあ美味しそうってなんだっけ?」

「……正真正銘の変人だな」

「すまない」

「才蔵謝るなよ! なんか悲しくなるから!」


と、拳が横を掠めた。


「政宗様を呼び捨てとは良い度胸じゃねぇか」


当社比三割り増しヤ●ザな小十郎。
鋭い眼光に、前髪が一房垂れている。
んでもって相変わらずつっこむとこがズレている。


「極殺モードキターっ! 写メ! 写メっ! って幸村に壊されたんだよ! ガッデム!」

「……やる気の失せる奴だ」


髪を整えながらため息をつく姿は正に極道の男。略して極男。
うん、無理矢理なのは分かってる。


「大人の哀愁漂う小十郎格好いい! アイラブ小十郎! そんな貴方にフォーリンラブ!!」

「おま、さっきオレにproposeしたじゃねえか」

「それはそれ。これはこれ。ちなみに才蔵も嫁の一人だす」

「(だす?)そんな目で見るな、独眼竜。片倉も。俺だって好きでなってるんじゃない」


政宗の冷たい目に耐えられなかったのか、才蔵が目を逸らしながら答えた。
お館様の命令だもんな。断るに断れなかったんだろう。
それを知って尻撫でた私は最低ですか。そうですか。
これでも少しは自重してるつもりなんだけどな。


「というわけで同盟もよろしく」

「そっちが本題なんだからついでみたいにするな!」

「ついでに嫁になって」

「ついではいらん!」

「抱かせて」

「少しは口を慎め! 寧ろ塞げ!!」


才蔵大変だな。
ちょっと緊張を解してやろうという私の心優しい気配りにもつっこむなんて。

と、政宗が笑いを零した。
喉を鳴らすように笑う姿はまるで悪役。竜の本性が垣間見えた。


「面白い奴らだ。What's your name?」


才蔵が首を傾げる。
英語分からないんだっけ。


「マイネームイズ蒼依 黒兎」

「発音は悪いが上出来だな。黒兎、Let's fight against me.」


日本語でおk。
同盟相手に失礼な物言いも出来ず、頭の中で英文を復唱する。
戦えって意味でいいんだよな。


「私が勝ったら?」

「同盟組んでやる」

「負ける気はしねぇけど負けたら?」

「オレのToyだ」

「……若いのにマニアックな性癖を持ってるな」

「Hold your tongue!」(黙れ)


目くじらを立てる政宗はさておき、才蔵と小十郎が何を話してたのか尋ねてきた。
んな嫉妬するなよ、と冗談のつもりで言ったが、拳骨を見舞いされ大人しく喋る。

誰か私に優しさと愛を与えてください。
泣きそうです。


「政宗、様が私に勝負を持ち掛けてきたんだ。私が勝ったら同盟組んでくれるって」

「負けたら?」

「政宗様の玩具」

「おもっ……!?」


今度は才蔵と小十郎が政宗に冷たい目を向ける番だった。

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