流石に気持ち悪いな。
べっとりと体についた血を撫で、考える。
傷は塞がれたが、動脈まで切れてたらしく吹き出た血液が顔やら服やらを汚していた。
嗅覚や痛覚が無くてよかったと今だけは心底思う。
同時に小十郎の言葉が蘇る。
化けもん、か。その通りだ。
他人に言われると嫌でも自覚する。

真っ赤に染まった手を見つめた。
いつか自分の血じゃなくて他人の血で手を染める時が来るのだろうか。
その血が自分の血か違う誰かの血か分からなくなるくらい血を浴びる時が。


手に付いた血を舐めてみた。
味覚の無い舌はヌルリと嫌な感触だけを教えてくれた。



「黒兎っ」

「重長……」

「血が一杯出ておるぞ。医者を呼ぼうか?」

「大丈夫。……重長はさ、大きくなったら……、大きくなっても。戦に出るなよ」

「何故だ? 重長も父上のような武人に……」

「政宗、様が平和な世を作るから。戦など無くなってるさ」

「そうだな!」


ぱぁっと明るくなる顔に、心が痛んだ。
ジクジクと疼くような痛み。
乱世に生まれたからには戦に参加しなきゃいけない。
私の知っている歴史通りなら目の前に居る少年も綺麗な手を血で染めてしまう。

嫌な世界だな

改めて思った。




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「見えない臓器の名前は」
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