弐
明朝。眠れない私には早起きも何もないので苦にはならない。
だが、今の自分の姿に溜め息をついた。
「やっぱり巫女さん服なわけね」
「歩き神子として行くんだ。当然だろ」
身支度を終えた才蔵は、昨日と同じ忍び装束。
尋ねれば出るときに変化をするらしい。
それに闘って分かったが、才蔵は暗器使い。身軽な姿に見えてもクナイや刀などの武器が仕込んであるのだろう。
「変化出来るんだね」
「一応な。成り替わるには技術が甘いが、町人や行商人に紛れる事ならば可能だ」
変化かぁ。そういや佐助って変化苦手なんだっけ。
見た目はそっくりだけど声はまんまだったもんな。
比べてかすがは漢字を喋るという差違だけ。仕草や声は本人そのものだった。
佐助って霧ばっかりだよな。闇属性なんだから真っ暗闇にするとかあればいいのに。
多分そのステージ嫌いになるよ。
「そういやお前、着崩し過ぎじゃないか」
「これが未来のお洒落さ(着物一人で着れないなんて言えない)」
「肌出し過ぎ……、いや、上杉の忍ほどじゃないか」
かすがを知ってるんだ。
まぁ、かすがも佐助ぐらい忍んでないもんな。
才蔵が言うように肌とか特に。
「何々、ムラムラする?」
「くびれのないガキに興味ねぇよ」
「い、一応はあるって」
「それをくびれと呼ぶなら俺にもある」
「マジで? 見せて」
「そこは怒れよ」
自覚はあるからね。
肉があまりついていないからか、くびれが目立ちづらいのは確かだし。
和気あいあいと会話をしていると、佐助がやってきた。
「才蔵、黒兎」
「長」
「見送り佐助だけ? お別れのちゅーの為に皆……」
「するか。俺様は伝言係」
「愛の告白ならばっちこい!」
「大将から帰りに酒買ってこいっつーのと、旦那から帰りにずんだ餅買ってこいって」
「あぁそうですか。パシリですか!」
ちょっとでも期待した私の馬鹿。
なんとなく分かってたじゃんか。
でも頑張れの一言ぐらいくれたっていいじゃんか。
「はい、お金。お釣りはあげるってさ」
「えっ、本当!?」
「単純だね。ま、頑張りな」
が ん ば り な !?
さり気なくだけど頑張れって!
感動した私は佐助に抱きつき、才蔵に殴られ、名残惜しみながら佐助と別れた。
ありがとう、嫁。私、頑張るよ!