弐
「変態」
冗談通じないなぁ。
んな冷たい言い方されたら落ち込むよ。
現在進行形で少し凹んでるよ。
間髪入れず変態って……。
「で、でも私の入浴シーンを見つめる佐助は変態じゃないのか!」
「凹凸のない体見ても……ねぇ?」
「酷っ! 泣くよ! 泣いていい!?」
「冗談だって」
へ、平均ぐらいだし! そりゃあかすがみたいなダイナマイトボディばかり見ていたら貧相かもしれないけど!
と、いつの間にか佐助の姿が無くなっていた。
多分どこかに身を潜めたんだろう。
監視するなら近くで良いのに。お湯かけてやるから。
ため息をつき服を脱ぎ捨てると、すぐに女中さんが畳んでくれた。
まるでお殿様のような扱いに一瞬感動するが、そのままどこかへと消えていく女中さん。
あ、私の制服……。
私に裸で出ろと?
見えない牢にでも入れたつもりだろうか。
ふっ、武田信玄もまだまだ。私は全裸を厭わない変態さ。
冗談は置いといて。
桶でお湯を掬い、頭から一気にかけた。
温かいお湯と共にわだかまりを流そうと思ったが予想外の感覚に悲鳴をあげそうになった。
嘘。
動揺を隠しきれず、今度は指先を湯船につける。かき混ぜるように手の甲まで浸けて、確信した。
熱くない
かと言って冷たいわけじゃない。
温度自体を感じないんだ。
感覚が死んでる。
触覚があるのは幸いだが、多分それ以外は死んでる。
痛覚、味覚、嗅覚もかな。
人殺しに必要のないものは死んでしまったらしい。
もしかしたらそれ以外にも死んでるかも。
化け物みたいだなぁ……。
腹の傷を見るともう塞がっていた。
治癒能力は人一倍あるようだ。
まぁかなり深い傷だったし、内臓出ててもおかしくない状態だった。
塞がっていないと暫くお待ち下さい、なんて放送しなきゃいけなくなる。
血や泥やらの汚れを流し、さっさと風呂を出ると柔らかい布に包まれた。
体を拭こうとする女中さんに囲まれ、焦る。
明らかに巫女さんの服持ってるし!
現代なら小柄と評価される小さな身体を忙しなく動かし、大和撫子は微笑む。
「未来の女子は皆大きいのかしら」
「丈足りないかもしれませんね」
「お若いようですけど齢は?」
「髪を結わせていただけませんか?」
思い思いに喋る女中さんのペースから逃げられるはずもなく、数分後には抵抗をやめ、数十分後には涙が出そうだった。
おなご最強伝説に時代は関係ないらしい。
さらしを巻かれた時にはどうしようかと思ったけど、髪は綺麗に結ってもらったし、服も着付けてもらった。
これでどこから見ても立派な
コスプレイヤーだよなぁ……