熱中症と神子には御用心
青い空。
白い雲。
蒼い海。
燦燦と照りつける太陽が夏を知らせる。
感覚の無い身体、汗が伝うことは無いが、夏自体は好きだ。
だって、海といえば水着!
水着といえば肌の露出!
私にとっちゃ涎もんなわけで、海と縁深い元親を訪ねにきたわけだが、
「日焼けするから」
という理由で普段より露出が少ない(第二衣装)元親を見る羽目になった。
「乳首隠す元親なんて元親じゃない! しかも日焼けするからって姫若子の名は捨てたんじゃないの?!」
「俺の存在意義乳首!? どんな認識してんだ、てめぇは!」
「オクラからも言ってやれ! ってなんで陰で涼んでるんだぁあああ!」
「こんな日差しの強い日に外に出たら、倒れる……」
「日輪大好きっ子じゃなかったの!?」
態々兵士(捨て駒)に陰を作らせ、冷たい砂糖水を飲むオクラ。
四国を貰い受けにきたというが、どうみても動く気は全く持ってない。
眩しい太陽に恨みがましい視線を送る姿に、日輪を信仰していた面影は見当たらない。
「水浴びとかしないの!? 涼しくなるよ!?」
「川ならともかく魚を漁る以外に海に入ってどうするのだ?
海水を浴びて何が楽しいのか、我には分からぬ」
う、そういえばこの時代って海水浴って概念が無いんだっけ。
確か海水浴が始まったのは明治時代。
それまで漁以外で海水に浸かることに意味を見出していない。
まぁ、大して意味は無いんだろうけど。私もプールばっかりだったし。
「折角褌一丁で水浴びをする姿を見れると思ったのに……。
目の保養をどこですればいいんだ!?」
「野郎の裸見て何が楽しいんだ。そんなに見てぇなら前田んとこ行け」
「濡れた裸っていうのが卑猥でいいんだろ!!」
どーん、とか壮大な効果音希望。
堂々とした主張に元親は面食らったような顔をしたが、すぐにチンピラのような表情になる。
逞しい腕が伸びてきたかと思えば、抱き上げられ海に投げ落とされた。
浅瀬だったからいいものの、着物はびしょ濡れ。
濡れた布が身体に張り付いて気持ち悪い。
あーあ、佐助に怒られそう。
どうしてくれるんだと元親を睨むと、にやりと意地の悪い笑みを浮かべる。
「裸でなくても、なかなかに卑猥だぜ?」
「私の頭の中はたまに卑猥だけど、それって関係ありますか!」
「ねぇだろ。つか、ちったぁ恥じろ」
「恥じたら脱いでくれるの?」
「諦めろ、長曾我部。こやつに恥を求めてどうなる? それより、黒兎」
「なに? 元就が脱いでくれんの?」
「ふむ、脱いでやってもいいぞ」
「え、マジで!?」
普段肌を全く露出しない人が脱ぐって燃えるんだけど!
予想外の言葉に勢いよく立ち上がると、水が散った。
布が全体に張り付いた挙句透けているが、気にしてる場合じゃない。
元就は端正な表情を歪め、
「我の唯々諾々とした駒になると誓うならな」
今まで見たこと無いほど良い笑顔を見せた。
熱中症と神子には御用心 脱がすっていう選択肢増やすしかないか。