「ふむ、お主らを疑いたくはないが……」

「殺しましたよ。急所を狙いましたし、悲鳴を上げることも出来ず死ぬ筈です。
その後旦那も刺しましたし」

「あの攻撃で倒せたという慢心が生んだ失態でござりまする! お館様、某を叱ってくだされぇえええ!!」


置いてけぼりの挙句、酷い会話だ。
どうせ私はあそこで死ぬべき人間だったさ。
ゲームのキャラクターが目の前に存在しているのに、感動も喜びもない。
赤と迷彩。私を殺した幸村と佐助の首をこのまま千切ってやろうか。
殺し合いなんてしたことないけれど、人殺しの力は持っているんだ。
このまま仕返しをして、元の世界に帰ればおしまいだ。

……これが戦国時代。
急激に冷めた心が理不尽を受け止める。


「してお主、名をなんという」

「蒼依 黒兎ですけど」

「黒兎か。傷は痛むのか? 詳しい話を聞きたいところじゃが、その傷ならば立っているのも辛いじゃろう。
佐助、手当てしてやれ」

「え、あ、心配、してくれるんですか?」

「黒兎は目の前に怪我人がいても心配せんのか」

「だって敵かもしれないんですよ! だから二人に殺されて、ここに来たのだって天狗って言われて、城主が天狗退治してくれるなんて町民が言うから。
実は間者かもしれないし、傷だって今は痛まないし、二人ムカつくし、お館様を殺すかもしれないし!」


頭の中がごっちゃになる。自分で何を言ってるかよく分からない。
曖昧なまま、言葉を羅列させた。


「何、殺したいならば殺すがいい」

「お館様!?」「大将!?」

「じゃが、ワシは強いぞ?」


唸るように笑う虎を見て、冷めていた心がじわじわと溶かされる。
出てきた言葉は素直な好意だった。
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「見えない臓器の名前は」
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