弐拾漆



「六人だと決めポーズ難しくないか。中心どうすんの」

「一人が胴体」
「二人が手」
「二人があ「ごめん、もういい。分かったから」
「「……」」

「五人でそんな非難するような視線送るなよ! わざわざ五人で分けるから面倒なことになっているんだろ」


五本槍の『空気読めよ』と言わんばかりの冷たい視線を逸らそうと怒鳴ってみるも、五対一では分が悪い。
五本槍をあっさり嫁に手に入れてしまったので、ひとまず捕まえた陣大将をひとまとめに括り、五本槍がこちらに寝返ったことを浅井本陣に伝えるのが作戦だったのだが、
しょうもないことに五人が決めポーズが必要だと譲らない。

五人を思いっきり殴り倒して無理やり言う事を聞かせようか。
私が裏切ったからとはいえ出会い頭に戦国最強砲撃って来やがったしな、こいつら。
六人で円陣を組み、不良座りで作戦会議をしながらも不穏な考えが過る。


「よし、決めた」
「不死の神子は」
「戦隊物によくいる」
「敵か味方か分からない」
「お助け伽羅ぽじしょんにしよう!」

「へぇー、まるでタキ●ード仮面……ごめんって。戦隊物だからブラックポジションなんだろ。
そんな悲しげな表情するなよ。中の中の顔が下の中ぐらいになってるよ」

「下の下の」
「胸の」

「黙れ! それだけは最後まで絶対言わせないから!」



馬鹿の五乗に頭を抱えるも、利用価値はある筈だ。
ブラックポジションでいいからと五本槍に本陣に乗り込むよう言う。
あまり時間をかけても面倒なだけ。背後に雑賀衆が居るとしても織田との戦に備えて兵を集めている。
一筋縄でいける相手ではない。

馬鹿正直に浅井本陣の前でポーズを決める五本槍を見て、本陣を囲む四つの陣全てが奪われた事を知ったようだ。
本陣に続く橋が下ろされ、五本槍の裏切りを怒る兵士達が湧いて出てくる。
陣大将を名乗っているだけあって、五本槍の強さはなかなかのようだ。
五本槍のピンチに格好良く駆け付けるという役目を担っている為、本陣に一番近い陣から様子を眺める。
柵に腰かけ、両足をぷらぷらと交互に揺らして待つも、契約者である浅井に会うのは気まずいのか、橋から奥へと向かおうとしない五本槍にやきもきする。

ふと、陣の前を通る人影に目を奪われる。
青白い肌に血色の悪い唇。長い白髪を揺らすのは織田の配下、明智光秀だった。
近くに織田の軍勢は見当たらないが、織田信長が「実の妹と義兄弟に手を出そうとしてゴメンネ☆」なんて手を差し出す事もないだろう。
未だ会った事ないから、もしかしたら半兵衛や元就のような酷いキャラ崩壊が起きる可能性もなきにしもあらず。
だがしかし、明智光秀が姿を現す事に良い予感など微塵も浮かばない。

後ろ手に引きずるは二本の大きな鎌。
私の鎌と比べると刃が少し小さめ。
足払いをかけたり、何度も切り刻んだり。言うならば甚振るのに適した鎌だ。

狙いは本陣のようで、今にも鼻歌を歌いだしそうなくらい軽やかな足取りで真っ直ぐに橋へ向かう。
真っ先に気付き振り向いた風(緑)を斬る為に振りかぶった鎌を背後から握ると、振り向いた顔は至極楽しそうな笑みを浮かべた。
おぞましい笑みは感覚があれば背筋が粟立っただろうが、生憎硝子のハートは既に粉々に砕けている。
それを今更足で踏みつけられようがなんともない。



「久しぶり、みっちー」

「おやおや、愉快な格好をしていますね。今流行りの男の娘……痛い!」



二話連続同じネタ言われるのは我慢ならないけどな!!

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