参
門、だ。修学旅行でしか見たことない立派な門とその向こうに日本のお城。
え、なに。江戸時代にでも紛れ込んじゃったの?
タイムスリップした途端殺されるなんて聞いたことないんだけど。
簡素な鎧に身を包んだ門番さんが、槍の刃先をつきつけてきた。訝しむ目は殺意ではなく、警戒。ならば刃は警告か。
死因である武器を向けられても、恐怖ひとつ感じない。改めて死んでしまったことを認識した。
「町民の言っていた天狗だな!」
「天狗じゃない。人間だってば」
「化け物、でしょ?」
突如降ってきた暴言に、眉を吊り上げる。
美声じゃなかったら怒鳴るとこだったよ。
空を仰ぐが人の姿を確認することは出来ず、狐につままれたような気分になる。
だが、前を見て驚いた。迷彩が悪意を込めた笑みを称えていたのだから。
私を殺した色と、同じ。
しかしそれ以上に迷彩の顔に驚いた。
猿飛佐助。ゲームの登場人物にそっくりな顔、そして同じ格好で立っている。
コスプレイヤーの類じゃない。本物の猿飛佐助が目の前にいる。
「嘘、だ」
「それは俺様の台詞。殺したのに何で生きてるの」
感情を押し殺したような低い声は殺意そのもの。
門番がさ、と青ざめたのが見えた。
「もう一回殺しておきたいとこだけど、大将が会いたがってるから。
あ、門は開けなくていい」
「え、ちょっ!?」
非現実的なことが積み重なりすぎて混乱する中、身体を抱えられ門を飛び越える。
OH、ジャパニーズニンジャ! なんて似非外人を気取りたくなるぐらいには困惑中だ。
死人になっても動揺はするんだね。
落ち着く間もなく立派な日本庭園に連れて行かれ、仁王立ちする二人組のもとに落とされた。
受け身を取る事も出来ず、地面に叩きつけられる。
腹立たしい対応だったが、顔を上げて固まった。赤だ。
見覚えのある赤は、私を殺した色。