拾陸
必然的に押し倒す形になる。
さらりとした細く真っ直ぐな髪が畳に落ちた。
慶次とは全く違う髪質。慶次のは太くてウェーブがかかっている弄りがいのある長い髪の毛。
元就も無理すれば結べないことは無いが、どうしても種類が限られる。
残念だ、と呟き、輪刀を奪い取るとブーメランの要領で適当に投げる。
あ、紅葉の木が切れた。秋には赤く色づくであろう紅葉の生命を一瞬で奪うとは恐るべし輪刀。
責任転嫁をしたところで、上半身だけ起こす。
未だ倒れたままの元就を見下ろし、流れ落ちた髪を掬いあげた。
両サイドで括るように、両手を元就の米神に持っていく。
「ツンデレでツインテってベタだよな」
「意味が分からぬ」
「分からなくていいよ。意味わかんない奴で有名だからね」
元就が意味を理解していたら吃驚だよ。
ニヤリと笑みを落とし、元就から体を離した。
亀甲縛りされた慶次を解放すべく(写メった後)縄を引きちぎろうと手を伸ばす。
だが思ったより複雑な構造だ。何処を千切ればいいかイマイチ分からない。
無理やり千切ると慶次が辛いことになりそうだし。
今頃だけど卑猥だよね。
幸村が居たら破廉恥だと絶叫せんばかりの格好だ。
慶次は今日から破廉恥担当だ。よし、決定。
「鋏があれば良いんだけど……。いや、普通の鋏じゃ切れないか」
「どうした。もっときつく縛るべきだったか」
「真顔で言うな。なぁこれってどうやって解けばいいんだ?」
「なかなかの出来だと思うのだが、黒兎が気に食わないのなら仕方ない」
「気に入る気に入らないじゃなくて、元々冗談だったからさ。慶次、怒ってる?」
別にー、と顔を背ける慶次はやはり怒っていらっしゃる。
そりゃそうだよな。嫁にこんな無体を強いる旦那を怒らないなんて馬鹿がつくほどお人よしか、よほどのMだ。
その前には殺されかけているわけだし。
亀甲縛りを解いてもらい、自由になった慶次はつまらなそうに目を伏せる。
やさぐれてる慶次萌え。ギャップに悶えつつ、話しかける。
「慶次、嫌なら帰っていいからね」
「は?」
睨み据える慶次の目は冷たいもの。
初めて向けられた。そんな、目。
「前田、黒兎に向かってそのような」
「やばい、ゾクゾクしてきた」
「え、はい? なんでそんな笑顔なの!?」
「私ってさ、拒絶されると余計燃えるというか」
「正真正銘の変態じゃん!」
「良いではないか、良いで、う……あっ!」
抉り込むような鋭い蹴りがわき腹を襲う。
慶次を脱がそうと服を掴んでいたから、慶次まで道連れにしてしまった。
なにあの蹴り。絶対靴に何か仕込んでるだろ!
部屋の中だというのに先の鋭い靴を履き、部屋の端まで転がった私たちを見下ろす。否、見下す。
「蛆虫め。我に汚い姿を見せるではないわ」
元就のツンってやりすぎだよね。