拾伍



「このような場を和まそうとする空気の読めなささ、真似できることではない。黒兎、胸を張るが良い」

「なぁそれって褒めてんの? 褒めてないよね。貶してるよね。
お願いだからこれ以上私を惨めな気分にさせないでください!
でも冷たくされると落ち込む。元就、こんな旦那でも愛してくれるかい?」

「愛しておるぞ。そなたの望むことは何でもしてやりたい」

「元就……! じゃあ、そこで手持ち無沙汰になってる慶次を亀甲縛りしてみようか」

「無理やり俺を巻き込もうとしないでください!」

「何を言ってるんだ。元就と言えば女王様。女王様といえばSMプレイ。SMプレイといえば明智なんだけど、居ないから反応が面白そうな慶次を巻き込むしかないだろ?」

「嫌な人の代用品!」



それに折角だからデレ元就を目一杯利用しなきゃ。
どこから出したのか太めの荒縄で慶次を亀甲縛りしようとする元就。
輪刀で動きを封じ、てきぱきと無駄の無い鮮やかな動きで慶次を亀甲縛りすると、やり遂げたと言わんばかりに輝いた笑顔を向けてきた。

手馴れてるね、と感想を漏らせば、日頃の勉強の賜物だと答えられた。
どんな勉強をしているのかと質問するには勇気がちと足りない。

それにしても毛利軍の兵卒ってM属性っぽいよな。踏んでほしそうな顔で元就見ていたし。
だがしかし。元就は既に私の嫁なんだぜ。
元就を踏むも踏まれるも私次第! そこまでハードなSMは求めていないけど。
語弊があるかもしれないから補足するが、ソフトなSMも求めていない。健全なお付き合いが良いよね。


まぁ慶次を亀甲縛りさせた私が言っても説得力ないけどさ。


なんで俺亀甲縛りされてんの? と純粋に疑問だけが浮かぶ顔を一瞥し、私にぞっこんラブ(え、死語?)な元就を見やる。
ツンとデレの切り替えが激しすぎてついていけないが、こんな元就も新鮮で面白いかもしれない。
元就に近づき、薄っぺらい体を上から下まで眺める。
後ろに回り、尻を撫でると冷静な顔が崩れた。こんなことやってるから変な噂が広がるんだろうな、と思いつつも止まらないのがイタズラ心というものだ。
普通の体だったらやらない(やれない)ことも化け物だからと気兼ねなく出来る。

別の世界から来た上、化け物だからな。
外聞を気にしなくてもいいのは唯一の利点だろう。



「なななっなっ」

「流石に怒るかー。だが後悔も反省もしていない!」

「そこはしようよ! てかここまでしておいて放置!?」



慶次のつっこみもなんのその。
狭い室内で輪刀を振り回す元就の攻撃を慶次の超刀で防ぐ。
鎌って攻撃はしやすいけど、防御には向いてないんだよね。

がん、と超刀が梁に引っかかった。
やばい。超刀で攻撃を受け止めたから分かるが、手で受け止めるには輪刀は見た目以上に重い。
避けようにも攻撃範囲の広い輪刀の攻撃だ。死角があるとすれば唯一つ。
持ち主である元就に抱きつくと、衝撃で二人して倒れ込むことになった。




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