「普段人に言われてるからその言葉でどれだけ落ち込むか分かっているが今だけは言わせてくれ。
お前、馬鹿だろ」



慶次の言葉をたたっ斬るが、至って自分は本気だと主張される。
そりゃあ慶次が嘘吐きだと罵りたくはない。
だからといって毛利元就が恋の病にかかったと素直に受け止められない自分が居るのも事実。
だってオクラだし。
なんて根拠の無い言い訳をしてみる。

血を粗方拭い取った私は、一先ず声をかけてみることにした。
窓の外を見やる元就の背中を叩く。



「オクラー」

「……おくら?」

「な!? 慶次慶次慶次っ、どうしようオクラが恋する乙女の目してる!」

「な、言っただろ? つかオクラって何?」

「オクラはオクラ以外何者でもないよ。慶次がニートであるように、毛利はオクラなのさ」

「わっけわかんねえ……」

「それよりも神子、我を嫁に娶るという話だが」



キラキラと少女漫画のように星が舞っている目を向けるな! 違う意味で怖い!
慶次にツンデレとはどういうものか教えようと思ったのになんでこんなに純粋な瞳してんの!?
頬を微かに染め、私の手を両手で挟み込んだ。



「その言葉、嘘偽りはないな?」

「慶次助けて! 今心から嘘偽りにしたい私が居る!
褒美に踏みつけてやろうとかいう女王様な毛利を求めていたのにさ!
なんで素直デレなの!? 我に跪き、許しを乞え。無様よのぅ、みたいなツンは何処!」

「そんなことで悦ぶ黒兎って正真正銘の変態だな」

「それだーっ! その軽蔑しきった目を毛利にやってほしかった!」

「夫に向かってそのような事は出来ぬ」



むっちゃ怖ぁああああっ!
顔を赤くさせるな。目を潤ませるな。簡単にデレるな。
毛利の手を振り解き慶次の後ろに隠れる。
瞬間毛利の目が厳しいものになった。ツンか? やっとツンか?



「前田の、貴様がわが夫を誑かしたのだな!」



いや、うん、まぁ誑かされてはいるけど。
しかし何故ツンがない。ツンがあってこそデレに萌えることが出来るのに。

毛利が突然ここまでデレるには理由がある筈。
私が告白した後は普通だった。じゃあその後だな。
投げつけた石の打ち所が悪かったとかベタな原因だったりして。
……え、そんなことないよな?



「慶次、もしかして私が投げた石のせいで性格が変わったのかな」

「え!? あ、でもありえるかも。明らかに毛利の様子可笑しいし」

「……性格改変チョーップ」

「ぐぁっ」

「毛利!? ちょ、いくらなんでも荒療治すぎないかい!?」

「これ以上デレてる毛利を見ていなかったんだ……」

「切なく言っても駄目なもんは駄目だから!」



強めのチョップに気絶してくれた毛利がツンに戻ることを願いつつ、デレへの免疫をそろそろつけなければと誓った。





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