「慶次それは詐欺だよ! 幸せになるのは慶次じゃなくて詐欺師だからな!」

「あんま人を疑っちゃいけねぇよ」

「ソウデスヨー。心汚イ証拠ー」

「ぐわぁああムカつく! 実は私巨乳なんだって言ったら信じるか!?」

「嘘吐きは泥棒の始まりだぜ」

「貴方嘘吐キノ目シテルネ」

「心綺麗な巨乳に向かって失礼だぁああああ!!」

「ちょ、黒兎危ないって」



慶次に飛び掛るように首根っこを掴む。
振り子のように体を揺さぶるが体重をかけすぎて、頭を床に打ちつけた。
つっこみ恐ろしい。頭割れたよ、慶次のせいで。

そりゃあ煩悩渦巻く胸は人より控えめサイズだけどさ。
揃って否定しなくても!

とりあえず純粋な慶次を騙したザビーをぶちのめさなければ。
まずはツボをザビーの頭につっこんで視界を奪う。そんでバズーカーを奪い取って慶次にパス。
ツボを取ろうとするザビーの顔をツボ諸共潰すべく、薙ぐように蹴りをいれた。

最後に戦利品と称してズボンを奪い取り、完了。
あ、ザビー思ったより足長い。


「そういえば元就は?」

「黒兎が石投げたせいで気を失ってる」

「えぇええええ、嘘だろぉおおおお!! どうしよう、よく見たら頭から血ぃ流してる!!」

「大丈夫だって、傷は浅いし。手当てすればすぐに起きるよ」



目が見えないまま石を投げたのが不味かった。
倒れている元就の額から流れてる血、血の気を失った顔。
そして私が投げたであろう石が凶器として残っていた。
探偵じゃなくても解ける事件じゃん、犯人私。Q.I.D.終わり。

魅惑の細い腰に惑わされつつ、担ごうにも血だらけの体じゃ毛利の服を汚してしまう。
全身血まみれってどういうことだ。ホラーか。

慶次にお願いして応急処置と運ぶのをやってもらうことになった。
不甲斐ない旦那でごめん、それとまだ体が重くて仕方がないんだ。
全く気にした様子の無い慶次の心の広さが最近不安になるよ。悪い人に騙されませんように!


追ってきた信者を撒いた頃には日が暮れていた。
城を出てすぐ、自分が流した血は消えていた。
上杉で一度死にかけ、再び化け物として再生してから、怪我した後の血は消えるようになっていた。
自分の体の部位ではないと判断して消えたのか、己の体の中に戻ったのか。
原理は分からないが、怪我も血も残っていない。
爆発やらなんやらで顔は煤だらけ、髪の毛はぼさぼさのままだったけど。

町外れの宿に泊まろうとしたが当然嫌な顔をされる。そこで少し多めに金を握らせ、部屋に通してもらった。
濡らしたふきんで体にこびり付いた血をふき取る。風呂が贅沢な時代だと知っていてもこういうとき恋しくなる。
湖や川じゃ限界があるし、強めのシャワーを浴びたいときだってある。


顔を柔らかく拭いてくれる慶次に甘えつつ、私は元就の様子を尋ねた。
元就は既に起きたのだが部屋の端で窓の外を覗いている一方。
声をかけようにもズタボロの姿では阻まれるということで今綺麗にしているところなのだ。

尋ねた途端真剣な顔つきになり、声を潜める慶次に私も身構えてしまう。



「毛利は、恋の病みたいなんだ」



……身構えた私の馬鹿。




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