「最後の一体!」



頭を引っつかみ地面に思いっきり叩きつけた。
人間と同じで頭から信号が出されているらしく、頭を壊せば動かなくなる。
万全の状態だったら慶次の力を借りずともほぼ無傷で壊せたのに。息を切らしている慶次を見て思う。

右手首から下、左目、左横腹。あと足の裏もか。身体が重い上、回復まで遅い。
感覚はいつものように死んでいるし、化け物並の怪力は残っている。
だが、水中を歩いているようなもどかしさがある。
未だ戻らぬ視力にイラつきつつ、気絶していたイケメン本井の頬を軽く叩く。



「ん、イケメン……」

「うわ、むかつく」

「イゲメ゛ッ」

「黒兎あっさり手がかり手放したね」

「ウッカリウッカリ」



うっかり思いっきり顔を引っぱたいてしまったせいで白目を向いたイケメン本井。
うわ言までイケメンか。よっぽど自分の顔に自信があったんだろうな。
私のビンタで歪んだ顔は中の下から下の下に。ドンマイ本井に改名した方がいいよ。

私と慶次以外動く者がいなくなった祭壇。
騒ぎを起こしたが元就が来る気配は無い。ま、持ち場を離れないのは良いことだ。



「慶次、雑魚は一旦無視。鍵を持っている奴だけ狙っていくぞ。
元就と、恐らく島津のおっちゃんもいるだろうから二人の目を覚まさせよう。
あ、あと慶次私を抱け」

「りょーか、はぁ!?」

「助平慶次、顔が真っ赤だよ。分かりやすく言うと私を抱いて運んでくれ。
あとで優しく抱いてやるから」

「黒兎の方が助平じゃん!」

「真っ赤になってうろたえる様子を楽しんでるだけだ!!」



何か言いたそうに口を開閉させるが、結局言葉は出てこなかった。
悔しそうに睨みつけつつも私を抱き上げてくれるところは流石だ。ありがとう慶次、お前は甘いね。

メカザビーは想像以上に強敵だった。人間であれば強さを見せつけ恐怖で地面に縫いとめることが出来る。
だが相手は心の無い機械。完全に壊さない限り立ち向かってくる。
おかげで目を焼かれた上、大量出血。動ける自分が不思議だ。
右目だけの世界は酷く狭い。バランスも取りづらいし、絶えず周りに気を配らなくてはいけない。

重たい体を慶次に預け、信者の横を駆け抜けていく。
私の言うとおり鍵を持っている奴だけを倒し、門を開けていく。
落ちてくる鉄製の大きな棘を避け、ホールに出ると緑色のわっかが見えた。
床に水平に浮いた緑色の輪は不思議な光を放っている。



「慶次、私をあの輪の中に投げ入れろ!」

「え、いいの!?」

「早くっ!!」



困惑しつつも素直に私を輪に投げ入れる慶次。
私の予想していた通り輪は私の存在を確認した途端一気に縮まった。
強い力で締め付けてくる上、高速回転してるから摩擦で肌が擦り切れる。

私を助け出そうとしてくれた慶次も背後を衝かれ、私のとは違う緑色の輪に捕まった。
確か人を操れるんだっけ。超刀を私に振りかざす慶次は混乱しつつも必死に軌道を逸らす。



「なんなんだよこれ!」

「それは封じ手「懐」輪刀をかけた敵を操れる技、じゃなかったかなぁ。
多分これは禁じ手「縛」。日輪の力強いね、私でも振りほどけない。
慶次、私のことは気にしないで振り返ってみなよ。後ろに元凶がいるからさ」

「……ふむ、そこまで理解して輪の中に入ったのか。貴様はよっぽどの大馬鹿者と見た」

「も、毛利!?」

「好奇心でつい。お、元凶の元凶がお出ましだ」



ついってなんだよ、とつっこむ慶次の視線を出口側の門に促す。
バズーカーの音と共に現れた似非教祖。横には島津の爺ちゃんもいる。
下劣な笑みを浮かべたザビーはゆっくりと私と慶次に近づいてきた。

右のバズーカーを慶次に、左のバズーカーを私の頭に向けられる。



「アナタ達、ホクロノ鼠デース! ワタシノ可愛イメカザビーチャンを壊シタ罰ヲ受ケテモラウンダカラ!
二人トモ言イ残シタコトアリマスカー?」

「ホクロの鼠じゃなくて袋の鼠じゃね?」

「元就、私の嫁に来ない?」



……慶次、それが最後の言葉って無いわぁ。



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