悪趣味な建造物。悪趣味な装飾品。悪趣味なロボット。
悪趣味な音楽の流れるザビー城にようやくたどり着いた。
横で相変わらず派手だなぁと感心している慶次もなかなかの悪趣味。
嫁を奪った城を適当にぶち壊してやろうと意気込んでいたのに、身体には異変が生じていた。


力が、出ない。


化け物じゃなくなった、わけじゃない。その証拠に相変わらず感覚は全く無い。
だが、身体に鉛を仕込んだかのような重さを感じる。
纏わりつく倦怠感に、私は動揺を隠せなかった。

(一応)神聖な場所である教会(のような城)に対する拒絶反応?
化け物は神様にも嫌われてるらしい。……神子なのになぁ。



「ザビー様は素晴らしい方です!」



先程から熱くザビーについて語ってくれるのはイケメン本井。
顔は、まぁ、うん。私に言えるのは名前に惑わされるな、それだけだ。

慶次はザビーと仲が良いようで、訪れるとイケメン本井がザビーの元へ案内してくれると言ってくれた。今の私には好都合の提案だ。
ザビーは嫁に欲しいとは思わないが、奥にはきっと元就がいる。
見つけたら掻っ攫ってしまおう。あの細い腰を堪能してやる!

準備があるから、と歯医者さんのような待合室で待たされた。真向かいの長いすと、本棚に並ぶ暇を潰し用の漫画と、雑誌。全てザビー印である。
進研ゼミみたいなノリの漫画を読む慶次の隣で、化け物のヒーローと恋に落ちる女王のネオロマ小説を読みふける。うん、途中サブリミナル効果でも狙っているのかと思うぐらいザビーの名前が出ることを除けば、面白い。


「お待たせしました」


イケメン本井の言葉に顔を上げるが、ザビーの姿はどこにも見当たらない。
代わりに奥から大量のメカザビーが。不穏な機械音に、構えられるバズーカー。
イケメン本井が静かに口を開く。



「慶次さん、貴方は喧嘩と称してメカザビーを二体壊し、貴方の保護者はここで暴れまわりザビー野菜を強奪しました。ザビー様はとてもお怒りです」

「えー、そんな昔のこと忘れちゃってよ」

「は!? ザビーと仲良いんじゃないの?」

「俺そんなこと言ったっけ?」



無邪気な笑顔を浮かべ、首を傾げる慶次に八つ当たり半分で尻を鷲掴みし、メカザビーを見据える。
鎌を取り出し、いつでも戦える状態に入る。
思いっきり尻を掴んだせいで痛みに悶絶する慶次を隅に投げ、バズーカーを構えるメカザビー目掛けて鎌を薙ぐ。

小規模な爆発によって鋭い聴覚が悲鳴をあげるが、今は文句を言っているときではない。
鈍い身体を奮い立たせ、メカザビーを蹴り上げる。同じく痛みを知らないメカザビーは腹を潰しているというのに目から光線を出してきた。

避け損ね、左目の視界が完全に奪われた。眼球を直に焼かれた。
じくじくと疼く左目を庇う暇もなくイケメン本井が左から切りかかってきた。
死角を狙われるとは思ったが、重い体じゃ反射神経で避けることも出来ない。

メカザビーの頭を切り落とし、落ちた頭の左半分を蹴り潰す。
裸足だから怪我は免れないが苦痛は無いし、とうに忘れた。

三体目のメカザビーの顔に拳を突き刺したところで、痛みから復活した慶次がイケメン本井を殴り飛ばした。
端まで吹っ飛んだイケメン本井は更にイケメンからほど遠くなってしまっていた。
顔面はやっちゃいかんよ。だがよくやった慶次。私の横腹もこれで報われる。



「黒兎、その傷……!」

「大丈夫大丈夫、私は不死の神子様だよ。それよりも目の前のメカザビーをどうにかするぞ」

「……りょーかい!」



不安げに揺れる慶次の双眸を瞥見し、右目だけでメカザビーを睨み据えた。
さあて、どう壊してやろうか。
一瞬赤く染まる視界と久しぶりに現れた昂揚する感覚に私は一人ほくそえんだ。


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