弐拾漆

門番に書状を渡すと、すぐに門を開いてくれた。
(頭の上に門の鍵のようなマークが見えたのは気のせいだと信じたい)
ギギ、と重量感のある門が開くと、私は意気揚々と一番乗りを成し遂げた。
それがいけなかったようだ。

佐助がお館様を庇うように腕を伸ばし、前に動いた。
才蔵も一瞬遅れ、武器を手に取る。
私はというと反応できず、上から降ってきたものを仰ぎ見るだけ。


気づけば私は地に突っ伏し、何か重しのようなものが乗っかっている。
それが本多忠勝と気づくのには時間がかかった。


「感動の再会でSMプレイだと!!?」

「黙れ」

「……」


ちょっとボケただけなのに!
動けないのをいいことに、佐助に手裏剣を投げられ、頭上を刃が通り過ぎた。
ほんの少し頭を下げるのが遅かったら首が落ちていたとこだったよ。

圧迫感はあるものの大した苦にならないのは、感覚が無いからか。

忠勝は無言で(始終無言だが)、私に乗せている足に力を込める。
全体重を込めれば、骨は砕け、内臓を傷つけ、文字通りぐちゃぐちゃになるだろう。
それでも痛みを感じず、身体は再生し、生きながらえるのか。

浮かんだ気持ちの悪い考えに自嘲する。


しかしミシリ、と懐で聞こえた不穏な音に表情を一変させる。


「忠勝! どけっ!!」


私の焦った声に、忠勝は戸惑いを見せたが、暴れだすのかと思われたらしく更に力を込めようとした。
やばい。それは絶対にやばい。
鎌を取り出し、腕に力を込める。懇親の力を込め、身体を起こした。


「どえりゃぁあ!」

「……!?」


忠勝をどかすと、私はすぐさま懐を探った。
中にあるのは携帯。これを直してもらうために来たのに、ここで潰されたら元も子もない。
背中のカバーが外れかけていただけで、傷は見当たらない。
ひとまず安心だ。どっちにしろ電源はつかなかったし。

私は鎌を消し、忠勝と向き合った。


「忠勝! 私達は戦いに来たわけじゃない!」

「……」

「家康に呼ばれてきたんであって、危害を加える気なんてさらさら無いし。
寧ろ同盟を組んで欲しくてやってきたんだ。な、お館様」

「家康からは連絡は来んかったかの。ワシはお主等と手を組みたい」

「その言葉、嘘偽りはないな?」

「家康!?」


ひょこりと、可愛らしい擬音がつきそうな動作で忠勝の後ろから現れたのは家康。
忠勝の大きさに圧倒されてて気づかなかったよ。
佐助と才蔵は気づいてたらしいが、それならそうと教えて欲しい。

気配とか読むの苦手なんだって。
第一隠されてたりしたら絶対に気づかないし。


「黒兎、すまんな。傷はないか? 
信玄公も試すような無粋な真似をしてすまんかった。
だが、ワシはほいほいと人を信じられる身ではないからな」

「私は平気だし、大丈夫!」

「国を預かっているのは同じこと。試すのも大事じゃろうて」


後ろで佐助が守るのは俺らなんですからねー、と苦笑いするのが見えた。
才蔵も眉を顰めつつも、頷いている。
その様子を笑う主二人。


「信玄公。それに黒兎、忍。招待するぞ」

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