半だるまヶ原
日の本を二つに断つ関ヶ原の戦いは幕を開けなかった。
寝殿造りの広い屋敷の一室、廊下まで笑い声が聞こえる。

朗らかに笑うのは太陽の香りを纏った青年。
射殺すような視線を投げかける青年は月の影を抱く。
太陽が絆を結ぼうと伸ばしていた手は肘から先がなく、敵と認識したものに真っ直ぐと駆けていた月の足は膝より短い。
将としての機能を果たさなくなった身体は戦意を喪失させるには充分だった。

腕があれば腹を抱え、目尻に浮かんだ涙を拭うだろう。
家康は昔話を語りながら、大笑いした。
楽しげな家康に三成は呪詛を零すも、武器が無い上、彼に駆け寄ることもできない。
無力な体に歯噛みし、家康を睨みつける。

「足が無くとも、いや腕さえ無くとも貴様の喉笛を噛み千切れることを忘れるな」

「わしだって頭突きがある」

「私の方が素早さは上だ」

「力比べならば負けないぞ」

「やるか」

「やってやるさ」


前言撤回、一触即発。
元々血気盛んな彼らは戦場には立てずとも、戦意喪失することはないようだ。
今にも戦い始めそうな二人を諫めたのは、毒気を含みながらも涼しい声。
二人の腕と足を奪った天下人の声だった。
「懲りないね。達磨になりたいの?」

「貴様ぁあああ! よくもぬけぬけと私の前に雁首を晒せたな! 私だけの脚を愛すと抜かした癖に裏切りは許さない!」

「これはなまえ殿。ワシの腕はどうだ?」

「毎日大事に大事に愛でているよ、この通りね」


天下人が袖を捲ると、身体に不釣り合いな筋肉質な立派な腕が現れた。
愛しげに腕を撫で、微笑む。
つられて家康も小さく笑んだ。





ヤンデレ×ヤンデレ×ヤンデレ
* 7/14 *
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