久々のお泊まりで、やることやって、素っ裸のまま一組の褥の中(褥とか言ってみたけど実際はベッドです)。
鳥の囀ずりに目を醒ますと、間近に彼氏の顔。

とりあえず顔と鎖骨から目を逸らす。
綺麗な面め。心拍数上がって目が冴えてしまったではないか。

目に入った時計の針は起床予定時刻の三十分ほど前を指している。

私は今日は授業がないのだが、蓮二は確か一限だけあったはずだ。

久々の手料理を食べさせるために布団から出ようと思ったのだが。


「……」


動けない。
彼の片腕は私の首の下。もう片腕は背中に周されている。
脚も絡められ、全身がっちりホールドされてしまっている。

なんとか片腕だけ脱出して、蓮二の背中を叩いてみる。


「蓮二、起きて」

「……ぅん、」


色っぽい声を出すな。腕の力強くするな。
ますます脱け出せない。
もっと強く叩いてみる。


「……まえ、もう少し…」

「おでこコツンしても流されないよ」


口ではそう言いつつも、ダメだ。顔近い。
かわいいけど、胸きゅんだけど、ほだされたら敗けだ。

今までの経験から、股間にあるものを握れば飛び起きるかもしれないが、朝っぱらから再び盛られたら身が持たない。


「蓮二、講義あるんでしょう?ほら起きて、顔洗って」

「……」

「おいこらコケシ。実は起きてるだろ」

「……当てずっぽうの確率、」

「100%でいいから。ほら腕離して、脚もほどいて」

「……」


反応無し。


「糸目で寝てんのか起きてんのかわかんないんだけど」

「三千世界の鴉を殺し……」


起きてた。二度寝してなかった。

この世の煩わしいものが講義か。


「今まさに朝寝してるでしょ。春は曙。見ないのは勿体ないからさっさと起きて」

「春眠暁を覚えず」

「駄々捏ねないで起きて」



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