本日は月に一回の、世のすべての男が恨めしくなる日だ。
腹痛に始まり、腰痛、関節痛、終いに頭痛。
動けないほどではないから学校には来ているが、できることなら生理痛が治まるまで家に引きこもってぬくぬくと布団にくるまっていたい。
薬よ、早く効いてくれ。
「先ほどから具合が悪そうですが、大丈夫ですか?」
机に突っ伏していた顔だけ上げ、柳生を見上げる。
「あんまり大丈夫じゃない」
「保健室に行かれた方が良いのではありませんか」
「ん、行ってくる」
「付き添いますよ」
「いい。お昼食べなよ。時間なくなるよ」
「お弁当も持っていきます」
「あっそ」
「みょうじさんもですよ」
「んー」
食べられる気しないけど、とりあえず持っていく。
保健室で食事する許可をもらって早々に、先生は呼び出されたらしく私と柳生は暫し留守を任された。
速攻でベッドに転がる。
「少しでも食べてください。薬が飲めませんよ」
「薬はもう飲んだよ」
「食後でなくても良い薬ですか?」
「うん」
柳生が弁当を食べ始めて、沈黙。
暇だ。
ひとりで弁当を食べ終えた柳生がパイプ椅子を持ってきて、ベッドの横に座る。
「どこが悪いのですか?」
「腹、腰、膝、頭」
「……風邪ですか?」
「違う」
柳生は察したらしく「……ああ」と声を漏らした。
相変わらず痛みは引かない。
「ああ、男が恨めしい。女に生まれたことが憎い」
「そう悪く思わないでください。将来、愛する人とのこどもを産むために必要なことですから」
そう言いながら柳生は私の背中を擦る。
柳生、もうちょい下。はいはい。
「……産むなら柳生のこどもがいいな」
擦る手が止まり、無言の柳生。
長いこと反応が返ってこない。
遠回しに告白したのにな。
様子を見ようと首だけ回せば、柳生の眼鏡がずれていた。
仁王と似ているのが癪に触るが、露になった切れ長の目は正直言ってかっこいい。
固まったまま、眼鏡を直そうともしない柳生。
しかし次第に顔が赤くなっていくのが見て取れて、私はほくそ笑んだ。