『光はひんやりしてて気持ちええわ』
とか言って先輩は夏場の間しょっちゅう俺に引っ付いてくる。
そして冬になったらお役御免。
ほんま自分の都合のええ人。
俺かて夏場に引っ付かれたら暑い。冬になれば寒さも感じる。
低いだけで体温無いわけやないんやから、冬かて引っ付いてくれてもええやないか。
冬のある日。先輩が風邪をひいたらしい。
俺は一人、先輩の家の前にいた。
インターホンを鳴らすと、間もなくおばさんが出てきた。
せやけど、なんで俺だけ見舞いに行かなあかんのや。
何度かお邪魔したことがあるんで、おばさんはアッサリ俺を先輩の部屋まで上げる。
おばさんはこれから買い物に行くからと留守番まで頼まれた。
娘と男を二人きりにしてええんかいな。
先輩の部屋のドアを開け、俺は思わず身震いした。
うおっ寒っ。なんやこの部屋、暖房器具一切ついてへんやん。
どちらかというと廊下の方が暖かい。
ドアを閉め、ベッドサイドまで近づく。
先輩が身動ぎ。
「あつい……」
ありえへん。この寒い中、この人布団蹴飛ばしよった。このままやったら治るもんも治らへんで。
仕方なく布団をかけ直す。
ベッドの縁に腰掛け、先輩の額に手をやる。
めっちゃ熱いっすわ。これなら布団を蹴飛ばす気持ちがわからんでもないっすわ。
手は頬を撫で、顎を伝い首筋をなぞる。
そこから、いきなりやった。
ガバッと布団が浮く。腕掴まれる。ベッドに引きずり込まれる。
先輩にがっちりホールドされ、俺まで布団の中。
この人、病人やろ。なんでそないな体力あるんや。
「気持ちぃ……」
そないな声出すなや、抱きつくなや、脚絡めんなや。
これが冷たいもんを求める執念かいな。
「先輩、放してください先輩」
「やーぁ」
「ヤやない」
この人、俺に風邪移す気満々やろ。
「先輩、寝んといてください」
「……」
「まったく……」
人の気も知らんで。治ったら覚えときや。