ラタ騎士の現代パロ的なお話その1
2015/01/14 20:57

「とつげき」
ガラッ
「と、隣の…」
「ばんごはー…」
ピシャンッ!

「おいてめえ閉めてんじゃねえよ開けろ!!」
 言い終わる前に窓を閉められて憤慨したラタトスクは窓の端に両手をかけ、側の壁で片足を踏ん張りながら必死に開けようと試みている。しかし、鍵で固定された窓が人の力で横にスライドしてくれるはずもなく。彼の努力は無駄に終わるのだった。


―――10分前。

「…金がねえ……」
 ラタトスクはひっくり返して中を出してすっかり空になった財布を上下に振りながら呟いた。
 彼は高校に通いながら大工の手伝いをしているのだが、明後日の給料日を目前に生活費が尽きてしまったのである。ここ2日間は双子の弟のエミルが家事などを手伝う代わりにもらってくる食材を残り物に足してなんとかしのいできたがもう限界だった。
 隣のリヒターにたかることを決めた二人は(ほぼラタトスクのごり押しだが)、普通にいくのも芸がないためベランダをつたって窓からの侵入を試みることにしたのだった。

「ラタトスク〜やっぱりちゃんと玄関から行った方が良いと思うんだけど…寒いよ〜…」
 真冬の外は寒く、しかも風がびゅんびゅんと吹き付けていた。ラタトスクは段々とかじかんでくる指先をこすりあわせながらエミルの方に振り返った。
「さみいからさっさとはいんだよ。開けるぞ」
「う、うん…」


「…というわけなんです。すみません…手の感覚がなくなってきたので入れてもらえると助かるんですけど…」
「……」
 後ろでダンダンと片足を上下させている兄が飛びかからないように制止しながらエミルが説明すると、窓がガランと音をたてて開かれた。しかしながら隣人の顔は険しい。
「…今度からは玄関から入れ……」
 ガタガタと震えながらこちらを見るエミルを気の毒に思ったのか、リヒターは肩を竦め諦めたように呟いた。

「なんだよお前またカップラーメンかよ。こんな乱れた食生活じゃ死ぬぞ」
ピシャンッ。
 エミルの後に入ろうとしたラタトスクが問答無用で閉め出された。彼はまたしても必死の抵抗をしたが再び窓が開くことはなかったのだった。

「あの、リヒターさん。食材ないですよね。僕ラタトスクと一緒に買ってきます」
「……ああ。あんまり大量に買い込むなよ」
 リヒターから食材費を受け取ったエミルが窓へ駆け寄りラタトスクを招き入れると、中に入った彼はリヒターを睨み付けドスドスと玄関ヘ向かっていった。


つづくかもしれないしつづかないかもしれない




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