蜜歌と真音の場合 真音は、扇風機が嫌いみたいだ。 蜜歌が何となくそう思ったのは、最近扇風機の前に座っていただけで機嫌が悪くなるからだ。 「蜜歌!いい加減それから離れろ」 「真音……だって、暑いよ」 アルファ棟はどうか知らないのだが、ガンマ棟にはクーラーが無い。 電脳双子のシグラと、それに搭載されたラジエーターに電力を取られている。 それに研究の為のPCやらなんやらのせいで、クーラーに回す電力が無いのだ。 「全然暑くない。いいから少し離れろ」 扇風機の前に座り込んでいた蜜歌の腕を掴み、真音は扇風機から少し離して座らせた。 「真音は肉体強化されてるからでしょ、ボクは肉体強化されてないもん。だいたい、なんで真音はそこまで扇風機が嫌いなの?」 不服そうに文句をいう蜜歌に、真音は気付いてないのかと言わんばかりに舌打ちをした。 「お前の声が汚くなるだろうが!」 「……あ゛ー」 蜜歌は扇風機の前で声をだし、真音の言っている意味に気付いた。 なるほど、確かに綺麗とは言い難い。 「歌うのに夢中になってて気付かねえし……」 完全にふて腐れた真音がなんだか可愛く見えて、蜜歌は気付かれないように笑った。 「ねえ、それって嫉妬?」 それ以降、扇風機は部屋から消えた。 ◆◇◆◇◆◇◆◇ 扇風機って声が違って聞こえるよねって話。 扇風機は真音が壊したのか、それとも蜜歌が処分したのか…… [*prev] | [next#] (←) |