「ふーん、気をつけてね」

「あ?いまさら言われなくても、怪我とかしねえよ」

心配そうに眉を下げる彼の言葉に、真音も怪訝そうに眉をしかめた。
いつもなら、やりすぎないでね。と言われることはあっても、真音達を心配する言葉をかけられることなど無い。

「君に関しては心配してないけど、蜜歌のことが少し……ね」

彼が言いたいのは、おそらく蜜歌の怪我についてだろう。
記憶が無くなってしまうほどの重傷を負った彼が、たった三日で復帰というのは常識的に考えておかしい事だ。

それなのにいきなり近接戦闘という危険性の高い訓練は、ともすれば命にすら関わってしまう。
それを危惧しての言葉だったのだが、真音にとっては立て板に水。杞憂とも呼べないような些細な事なのだ。


「わかってる。今日はこいつに何かさせるつもりはない」

「いや、そうじゃなくて……」
「わりい、もう訓練の時間だから行くわ」

腕につけた時計を確認した真音は、何かを言いかけた彼に背を向けて走り出した。

どちらかと言うと心配性な彼は、少し心配しすぎてしまう事がある。それゆえとても用心深くもあるのだが、こういう時には少し困りものだ。

「蜜歌に怪我とか、ありえねーし」

今も黙って後ろをついて来る蜜歌の存在を感じながら、少しだけ不機嫌そうに呟いた。

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