「おい蜜歌、いい加減一人で歩け」

片腕にしがみつくようにして歩く蜜歌に、半ば呆れたようにいうが、彼は真音の顔をじっと見るだけで腕を離そうとしない。
記憶が無くなった影響なのかはわからない。まるで幼子のような蜜歌の振る舞いに、戸惑うことが無いと言えば嘘になる。

しかし、まるで真音しか頼るものがないとでも言うような蜜歌の態度に、言い知れぬ高揚感を感じてしまうのもまた事実だ。

「あ。真音、蜜歌おはよう」

「おー、電気の双子。はよ」

曲がり角で鉢合わせた見慣れた茶髪の二人に、真音は片手を上げて挨拶する。

「蜜歌は今日から訓練に復帰するの?」
「おう。俺と同じメニューの日の方がいいかと思ってな」

今日の真音と蜜歌の訓練内容は、二人とも同じトレーニングルームでの体術訓練だ。
最近別々の訓練を言い渡されることが多くなってきた二人にとって、こんな機会は滅多に無いことだ。

更に幸いなことに、訓練内容は近接戦闘。真音の専門分野とも言えるその内容ならば、今の蜜歌がいても楽に終わらせられるだろう。

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