回顧


「蜜歌、朝だから起きろ」

そう言いながら布団から出た肩を揺り動かす真音の手に、蜜歌は閉じていた瞳をゆっくりと開いた。
真音は既にヴォルガー指定の戦闘服に着替えており、蜜歌は寝ている間に乱れた自分の服を不思議そうに見た。


「ほら、お前の。着方わかるか?」

自分が着ている服と同じものを蜜歌に差し出すが、彼はただ首を横に振るだけだった。

−−蜜歌が銃の暴発により記憶を失ってしまってから、今日で三日目。
今でも、彼は言葉すら話せずにいる。

三日の間は療養の為にと訓練を免除されていたが、これ以上復帰できずにいたら“処分”されてしまうだろう。
それを感じ取った真音は、形だけでも訓練に参加させようと思っていたのだが、今の蜜歌の状態では難しいかとため息をついた。


「ほら、着せてやるからそこ座れ」

ベッドの縁に座った蜜歌の足元に跪づき、夜着代わりに着ていたシャツとズボンを脱がしていく。
されるがままの蜜歌に服を着せ、靴まで丁寧に履かせて立ち上がらせる。

鏡の前で髪を整え、温タオルで顔拭いたり歯や手先を綺麗にするなど、身支度を全て整えてやってから部屋を出た。

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