4 「あ。汐、眼鏡屋あったよ」 エスカレーターを上がって少し歩いた所にある眼鏡屋を発見し、澪は汐の手をひいて店舗を覗き込んだ。 ちょうど新生活応援キャンペーンを開催中なのか、レンズとフレームが二割引き!と至るところでポップが踊っている。 「なんか色々あるね……」 「ここまで多いと目移りするな」 所狭しと並んでいるフレームを見て回り、良さそうな物を実際にかけてみながら選んでいく。 候補を決めたら最終的には汐に選んでもらうつもりでいた澪は、時々彼の方を窺いながらいくつかのフレームを店内の机に置いた。 「汐、どれがいい?」 澪は優柔不断とかそういうわけではなく、単純に汐が好きだから彼の好きな眼鏡をかけたいという理由だ。 実際、眼鏡のフレームにはそれ程こだわりは無い。 それを汐もわかっており、期待を込めて見つめてくる澪が可愛いと思いながら、フレームに目を向けた。 「そうだな……」 フレームと澪の顔を何度か行き来し、彼にはどれが一番似合うかを真剣に考える。 ここまで真剣に考えたのは、これまでに無いと言えるほどの熟考ぶりだ。 [*prev] | [next#] (←) |