「あ。汐、眼鏡屋あったよ」

エスカレーターを上がって少し歩いた所にある眼鏡屋を発見し、澪は汐の手をひいて店舗を覗き込んだ。
ちょうど新生活応援キャンペーンを開催中なのか、レンズとフレームが二割引き!と至るところでポップが踊っている。

「なんか色々あるね……」

「ここまで多いと目移りするな」

所狭しと並んでいるフレームを見て回り、良さそうな物を実際にかけてみながら選んでいく。
候補を決めたら最終的には汐に選んでもらうつもりでいた澪は、時々彼の方を窺いながらいくつかのフレームを店内の机に置いた。

「汐、どれがいい?」


澪は優柔不断とかそういうわけではなく、単純に汐が好きだから彼の好きな眼鏡をかけたいという理由だ。
実際、眼鏡のフレームにはそれ程こだわりは無い。
それを汐もわかっており、期待を込めて見つめてくる澪が可愛いと思いながら、フレームに目を向けた。


「そうだな……」

フレームと澪の顔を何度か行き来し、彼にはどれが一番似合うかを真剣に考える。
ここまで真剣に考えたのは、これまでに無いと言えるほどの熟考ぶりだ。

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