2 “−−蜜歌は見た目こそ対した事ないけど、打ち所が悪かったみたいで” 「蜜歌?」 真音の呼び掛けにふ、と目を開けた蜜歌だが、彼の事を一瞥しただけでまた視線をよそに向けた。 “出血も多くて、心臓が少し止まったんだ” (そういえば、今朝はまたあいつの事で喧嘩したんだっけ) そっと、彼の肩に手をかける。 いつもならば、こちらが手をかける前に笑って“どうしたの”と聞いてくるはずだった。 “後遺症は残らないと思う……でも、海馬が結構ダメージ受けたみたいで” 不思議そうに見返してくる蜜歌に、真音はまるで確認するかのように呟いた。 「記憶、全部消えたんだろ?」 診断は、逆向性の全生活史健忘症。 精神的なダメージによるものが多いそれは、極稀に頭部のダメージにより発症することがある。 蜜歌は怪我のショックで、暴発より以前の全ての記憶を失ってしまった。 “−−蜜歌は、生まれたての赤ん坊と同じだと思っても良いと思う” [*prev] | [next#] (←) |