3 「でも、今の生活もまんざらじゃないんだろ?」 「うん!この間なんてね、彩花がエプロンで出迎えてくれたんだよ!」 「……和服で?」 真音は和服にエプロンという、なかなか見かけない組み合わせを想像したが、雨丸は笑顔で否定した。 「ううん、は・だ・か☆」 「黙れ」 「冗談だって、ちゃんと洋服もあるよー」 真音はからかい甲斐があると笑う雨丸を、ひっぱたきたい衝動に駆られたのは言うまでもない。 ついでに、裸エプロン発言に目を輝かせる自分の兄弟もひっぱたきたい。 「ねえ、まお……」 「それ以上言ったら生徒連れてカラオケ行ってやる」 常々人前で歌うなと言う蜜歌には、この脅し文句は効果覿面だ。 もっとも、歌うのは軽いトラウマな真音が歌うことは無いのだが。 「ええ!?真音、駄目!」 ならばその不埒な妄想を今すぐ止めろと目線だけで訴え、真音はため息混じりに傍らに置いたバイオリンを手にとった。 軽く弾いて音を確かめると、真音は蜜歌に向き直る。 「蜜歌、昼休みまだあるし、もう一回歌うか?」 「うん!」 いそいそと真音の隣を陣取る蜜歌に、やはり少しだけ羨ましくなる。 朝から空いたままの隣を見て、雨丸は蜜歌と真音の歌を聞きながら彩花にメールを送った。 『今、蜜歌と真音の歌聞いてるよ。 P.S.会いたい』 『相変わらずだね、二人は。 P.S.ボクも。』 間髪入れずに返って来たメールに、雨丸は今日も定時で帰ろうと決めた。 ◆◇◆◇◆◇◆◇ 真音はツンデレ。 昼休みは音楽室で過ごすのが日課な蜜歌と真音。 [*prev] | [next#] (←) |