「でも、今の生活もまんざらじゃないんだろ?」

「うん!この間なんてね、彩花がエプロンで出迎えてくれたんだよ!」

「……和服で?」


真音は和服にエプロンという、なかなか見かけない組み合わせを想像したが、雨丸は笑顔で否定した。

「ううん、は・だ・か☆」
「黙れ」

「冗談だって、ちゃんと洋服もあるよー」


真音はからかい甲斐があると笑う雨丸を、ひっぱたきたい衝動に駆られたのは言うまでもない。

ついでに、裸エプロン発言に目を輝かせる自分の兄弟もひっぱたきたい。

「ねえ、まお……」
「それ以上言ったら生徒連れてカラオケ行ってやる」


常々人前で歌うなと言う蜜歌には、この脅し文句は効果覿面だ。
もっとも、歌うのは軽いトラウマな真音が歌うことは無いのだが。


「ええ!?真音、駄目!」

ならばその不埒な妄想を今すぐ止めろと目線だけで訴え、真音はため息混じりに傍らに置いたバイオリンを手にとった。

軽く弾いて音を確かめると、真音は蜜歌に向き直る。

「蜜歌、昼休みまだあるし、もう一回歌うか?」

「うん!」

いそいそと真音の隣を陣取る蜜歌に、やはり少しだけ羨ましくなる。
朝から空いたままの隣を見て、雨丸は蜜歌と真音の歌を聞きながら彩花にメールを送った。


『今、蜜歌と真音の歌聞いてるよ。
P.S.会いたい』

『相変わらずだね、二人は。
P.S.ボクも。』



間髪入れずに返って来たメールに、雨丸は今日も定時で帰ろうと決めた。





◆◇◆◇◆◇◆◇
真音はツンデレ。

昼休みは音楽室で過ごすのが日課な蜜歌と真音。

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