「彩花……オレが学校に残るよ!」
「めぇ!?」

まるで雷に撃たれたかのような顔でショックを受ける彩花に、雨丸は両肩に手を置いて落ち着かせるように目を合わせる。

微妙に距離が近いのは気にしないことにした。


「彩花はオレより体が弱いんだし……もしこんな労働させて、倒れたら嫌だよ」

「めぇ……」
「でも、メールして?電話も」

まるで単身赴任でもするような勢いで話しているが、二人の家は学園から徒歩五分圏内だ。

「めぇも、無理しちゃ駄目だよ?あと、絶対ボクのところに帰って来てね?」

「うん、約束する」


そろそろ黙らせてもいいものかと、朧は真剣に悩み始めた。
どうやらこの二人を甘く見ていたらしく、二人の世界を築き始めている。

否、完成している。

「一日中、めぇの事考えてる」
「オレも」


雨丸の額に口づけしながら、彩花が言うのはこの際構わない。
しかし、雨丸は一日中彩花の事しか考えないのは非常にマズイ。

「……もういいかな?」


そろそろ次の授業があるのだが、最初から他人に興味のない彩花と、そんな彩花が大好きな雨丸には聞こえてすらいない。


いくら人手不足だったとはいえ、この二人を採用したのは失敗だったのではないかと後悔するしかなかった。



◆◇◆◇◆◇◆◇

こうして彩花様は主夫になった。
雨彩……いいえ、彩雨です。

教頭は迷ったあげく、何となく朧。

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