Side蜜歌


例えばの話、君以外の人に好きだと囁く僕を、君は好きでいてくれますか?


「蜜歌……寝ていたんですか?」

頬に触れる心地良い体温に、蜜歌はそっと目を開けた。
目の前には、鮮やかな紫の髪と金の眼をした大切な人。


「ほら、そんなに目を擦ったら赤くなってしまいますよ」

目を擦っていた手が優しい動作でとられ、蜜歌は横たえていた体を起こして彩花に顔を向ける。

こんな生活を送るようになってから約十年、彼とずっと一緒にいる。

他でもない、自身がそう望んだこと。


「おはよう」

“おはよう”


彩花の声に合わせて、口を動かす。
ああ、なんて幸せ。

この十年の間、彩花の声は蜜歌のモノで、蜜歌は彩花のモノだった。
それに幸せを見出だす自分は、もう狂ってしまったのだろうか。


「そういえば、日本に行っていた三人が今日戻るらしいですよ」

「本当?ねえ彩花、お土産あるかな?」

「さあ……比良と由良はそういうことはあんまりしないから……氷魚ならくれるんじゃないですか?」



彩花と会話をしながら、いつもの服に着替える。
濃紺の服は首元を隠すようにデザインされていて、ずっと着ていたお気に入りの服。

“彼”と、“あの子”と繋がっている証。

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