「めぇ?ごめんね、起こしちゃった?」

「彩花、どこか行くの?」

彩花の言葉に頭を振った雨丸は、不安そうに彼の手を両手で握った。
彩花はそんな様子に微笑んではいるが、視界の端に写るピアスに苛立ちが募るばかりだ。


「ちょっとね。でも、すぐ戻るよ」

あんなに綺麗だった雨丸の肌を傷つけ、お揃いという忌ま忌ましい鎖を付けた彼に、罰を与えに行くだけだ。
しかし、そんな彩花の心情を察したのか、手を握る雨丸の力が更に強くなった。

「ねえ彩花、なんで怒ってるの?」

「怒ってなんか……」
「嘘」

ごまかそうとした言葉が遮られて、彩花は少し困ったような顔をする。
こんな汚い感情、知られたくはないと思うのに。

「もしかして……このピアス?」
「え……」


どうして、といった感じの彩花の表情に、雨丸は予感が当たったのだと悟る。

悲しげに眉を寄せる彩花に、雨丸は笑って抱き着いた。

「これね、“あの子”は班長とお揃いだと思ってたみたい」


改めて思い知らされる現実に、彩花の表情は更に険しくなる。
しかし、雨丸は安心させるように彩花の背中を叩きながら言葉を続けた。


「でもね、これ紫色なんだ。オレにとってこれは、彩花なんだよ」

まだ王太とパートナーだった頃お揃いで買った花のピアスは、彩花と同じ色。

紫色は彩花の色。
雨丸は、無意識に彩花を求めていたのだと笑った。


「彩花、大丈夫。ずっと一緒だったんだよ」








◆◇◆◇◆◇◆◇
この小さな存在も、君色に塗り替えて。


ときどき情緒不安定になる彩花様。

お揃いの花のピアスは、王太がピンクで雨丸が紫を買った感じ。
こんな扱いですが、王太が嫌いとかではないです(笑)

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