2 「めぇ?ごめんね、起こしちゃった?」 「彩花、どこか行くの?」 彩花の言葉に頭を振った雨丸は、不安そうに彼の手を両手で握った。 彩花はそんな様子に微笑んではいるが、視界の端に写るピアスに苛立ちが募るばかりだ。 「ちょっとね。でも、すぐ戻るよ」 あんなに綺麗だった雨丸の肌を傷つけ、お揃いという忌ま忌ましい鎖を付けた彼に、罰を与えに行くだけだ。 しかし、そんな彩花の心情を察したのか、手を握る雨丸の力が更に強くなった。 「ねえ彩花、なんで怒ってるの?」 「怒ってなんか……」 「嘘」 ごまかそうとした言葉が遮られて、彩花は少し困ったような顔をする。 こんな汚い感情、知られたくはないと思うのに。 「もしかして……このピアス?」 「え……」 どうして、といった感じの彩花の表情に、雨丸は予感が当たったのだと悟る。 悲しげに眉を寄せる彩花に、雨丸は笑って抱き着いた。 「これね、“あの子”は班長とお揃いだと思ってたみたい」 改めて思い知らされる現実に、彩花の表情は更に険しくなる。 しかし、雨丸は安心させるように彩花の背中を叩きながら言葉を続けた。 「でもね、これ紫色なんだ。オレにとってこれは、彩花なんだよ」 まだ王太とパートナーだった頃お揃いで買った花のピアスは、彩花と同じ色。 紫色は彩花の色。 雨丸は、無意識に彩花を求めていたのだと笑った。 「彩花、大丈夫。ずっと一緒だったんだよ」 ◆◇◆◇◆◇◆◇ この小さな存在も、君色に塗り替えて。 ときどき情緒不安定になる彩花様。 お揃いの花のピアスは、王太がピンクで雨丸が紫を買った感じ。 こんな扱いですが、王太が嫌いとかではないです(笑) [*prev] | [next#] (←) |