Side彩花 例えばの話、君の中に僕以外のなにかを見つけたら、僕はどうすればいい? 「めぇ……」 そう小さく呟き、雨丸の閉じられた瞼にそっと触れる。 目の前には、我が物顔でそこに鎮座している、ちいさなピアス。 彩花以外と、王太とお揃いだと言った、ちいさなピアス。 「めぇは、どうしてずっとそれを着けてるの?」 君はもう、王太のパートナーだった頃の雨丸ではないのに。 そのピアスを見ていると、身を焦がすような憎悪と殺意に支配されそうになる。 叶うなら、王太の耳を引きちぎり、お揃いだと言ったその口を塞いでやりたい。 同じピアスなんて、世の中に大量にあると知っているのに、心が追い付かない。 「めぇ……めぇ」 寝ている雨丸の額をそっと撫で、ピアスに指を這わせる。 あの、耳を犯す不快な声が頭から離れない。 不快。 全てが不快。 「めぇ、少しだけ離れてもいい?」 ピアスを撫でていた方と逆の手は、雨丸が握り締めて寝ているためここから離れられない。 そんな時間も至福の時。 しかし、このまま此処にいると妙な考えを起こしてしまいそうで、雨丸の手にそっともう片方の手をかけた。 「彩花……?」 すると、なにかを察した雨丸はうっすらと目を開け、解こうとしてかけた彩花の手を更に強く握った。 [*prev] | [next#] (←) |