3 「あやはなっ!」 授業終了と同時に、あちこちにハートと甘い空気を撒き散らして雨丸は彩花に抱き着いた。 彩花も迷わずそれを受け止めると、雨丸の額に口づける。 「お疲れ様」 「彩花っ彩花っどうだった?」 「かっこよかったよ」 とても嬉しそうに彩花の首に手を回し、雨丸は甘えたように頬をこすりつける。 しかし、ここが教室だと忘れてはいないだろうか。 ドン引きする保護者と、生徒達の疲れ果てた視線もものともせず、彩花と雨丸は談笑中だ。 「彩花、これから懇談会があるんだって!彩花も見てく?」 「うん。じゃあ、そのあと一緒に帰ろう?」 「……お前ら、懇談会やらなくて良いから帰れよ」 マラソン10Km走った方が楽なのではないかと思うほど、僅か一分で王太は疲弊しきっていた。 流石に初めて見た保護者にこれはキツイだろうと、懇談会に使うと思しきプリントを教壇から探し当てる。 「いいえ!しっかりやります。ね、彩花!」 「うん、頑張って」 しかし雨丸が彩花にベタベタしながら懇談会を始めるのは、それから五分後のことだった。 ◆◇◆◇◆◇◆◇ 彩花様は保護者ですらないっていう(笑) [*prev] | [next#] (←) |