「あやはなっ!」


授業終了と同時に、あちこちにハートと甘い空気を撒き散らして雨丸は彩花に抱き着いた。


彩花も迷わずそれを受け止めると、雨丸の額に口づける。


「お疲れ様」

「彩花っ彩花っどうだった?」
「かっこよかったよ」


とても嬉しそうに彩花の首に手を回し、雨丸は甘えたように頬をこすりつける。
しかし、ここが教室だと忘れてはいないだろうか。


ドン引きする保護者と、生徒達の疲れ果てた視線もものともせず、彩花と雨丸は談笑中だ。

「彩花、これから懇談会があるんだって!彩花も見てく?」

「うん。じゃあ、そのあと一緒に帰ろう?」



「……お前ら、懇談会やらなくて良いから帰れよ」

マラソン10Km走った方が楽なのではないかと思うほど、僅か一分で王太は疲弊しきっていた。
流石に初めて見た保護者にこれはキツイだろうと、懇談会に使うと思しきプリントを教壇から探し当てる。

「いいえ!しっかりやります。ね、彩花!」
「うん、頑張って」


しかし雨丸が彩花にベタベタしながら懇談会を始めるのは、それから五分後のことだった。





◆◇◆◇◆◇◆◇


彩花様は保護者ですらないっていう(笑)

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