2 「彩花、瞼にちゅうは憧憬の意味なんだって!」 「……ん?」 顔を輝かせてリビングに出てきた雨丸に、彩花はしゃもじを持ったまましばし固まった。 何故、そのことをいきなり。 「ねえ彩花、聞いてる?」 「聞いてるけど、どこでそれを?」 「えーとね、この間氷魚が学校に来た時に番長に言ってた」 (ああ、やっぱりあの変態か) 予想通りの名前に内心青筋を立てながら、表面は平静を保つ。 雨丸の知らないことは、全部自分が教えたかったのに。 「ねえ彩花、額はどういう意味?」 「氷魚に聞かなかったの?」 「聞いた気もするけど、忘れちゃった」 悪気もなく笑う雨丸に、ならば良いかと思ってしまう。 氷魚に教えてもらった事を塗り変えるように、忘れられないよう最大限の愛を込めて。 「ここは、友情」 額に、小さくキス。 「憧憬、懇意」 瞼、頬にキスをしながら彩花は順に意味を口にする。 「ここは、愛情」 そう言って唇に口づけすると、雨丸は目に見えて嬉しそうな顔をした。 [*prev] | [next#] (←) |