君にキス 「めぇ、おはようの時間だよ」 そういって、彩花はふかふかの布団に包まった雨丸の額に口づけを一つ落とした。 彩花が大手デパートで吟味してきた布団は、自分が出ていくらか経っているにも関わらず、未だに適度な体温を残している。 「めぇ?」 「彩花ぁ……」 起こそうと額に手を当てるが、ぽつりと呟いた寝言と寝顔があまりにも可愛らしすぎて、彩花は思わず伸ばした手を引っ込めた。 「めぇ、まだ寝る?」 本日も学校があるのだが、彩花にとってそのような俗事など、雨丸のためならば無意味と化す。 「ううん、起きる……」 残念なことに起きてしまったが、目を擦りながら起きる様子がかわいらしいので、彩花は朝からご満悦だ。 「じゃあ、ご飯用意してるね」 「うん」 雨丸の瞼に口づけすると、彩花は先ほど用意した朝食をテーブルに並べようと部屋を出ていった。 雨丸は瞼を一撫ですると、何かを思い出したかのような顔をして、きちんと着替えてから彩花の後を追って部屋を出た。 [*prev] | [next#] (←) |